「キャンディケイン」藤田和日郎、「一日三食絶対食べたい」久野田ショウ、『ACCA PS』『ACCA 外伝 ポーラとミシェル』『ハヴ・ア・グレイト・サンデー』オノ・ナツメ、『S-Fマガジン』2018年2月号

『モーニング』2018年2・3合併号(講談社

 オノ・ナツメ藤田和日郎やまだないとの読み切りが掲載されている、36周年記念号です。『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』というコメディと、『テセウスの船』というサスペンスが面白そう。

「黒博物館 キャンディケイン」藤田和日郎
 ――閉館時間を過ぎて黒博物館に駆け込んできた女は、狼男に襲われたと学芸員に告げた……。

 黒博物館シリーズの新作読み切り。掌篇に近いような短さの短篇ですが、シリーズものだからこその意外性。これまで飽くまで進行役だった学芸員が主役。巻末には「See you in the 3rd series.」とあるので、『スプリンガルド』『ゴースト&レディ』に続く3作目も描かれる予定はあるようです。
 

アフタヌーン』2018年2月号(講談社

「一日三食絶対食べたい」久野田ショウ
 ――世界が氷に覆われ、生き残ったユキはリッカという少女と共同生活をしていた。病弱なリッカのためにも働いて栄養のあるものを購入したいユキだったが、求人は危険な「外の仕事」しかなかった。

 「三途の川でワルツを」で審査員特別賞を、「宇宙のライカ」で四季大賞を受賞した著者による新作読み切り。感情の起伏はあからさまには描かれていないのに、この作品であれば、えんどう豆と笑顔だけで充分です。こうした機微の描き分けが、いずれ長篇連載を始めたときにどうなるのか楽しみです。
 

『ACCA 13区監察課 P.S.』(2)、『ポーラとミシェル ACCA外伝』オノ・ナツメ(スクエア・エニックス
 ACCAは登場人物がたくさんいるので、1巻から読み返す必要がありました。ジーンがオータスと苗字で呼ばれずにファースト・ネームで呼ばれている理由には唐突感がありましたが。スイツ区議員はあの特徴的な髪のハネがコマから切れていますがあの人なんですね。ウォーブラーが3期連続に決まったときの「本当だったんだ」というエグレットの一言は3巻・4巻を踏まえてのことだったり、エイダーとグルスは2巻で接点が描かれていたり、細かい発見がいろいろありました。外伝『ポーラとミシェル』は『P.S.』1巻で描かれたパイン長官とマホガニーというライバルの娘同士の物語です。内容はほぼ正篇とは関わりが少なく、こうした背景の物語ならまだまだたくさんありそう。ほかの登場人物がらみの外伝も読みたい。
 

『ハヴ・ア・グレイト・サンデー』(1)オノ・ナツメ講談社モーニングKC)
 ニューヨーク帰りの作家と息子と娘婿の日常を描いた掌篇集。番外編には『COPPERS カッパーズ』のキースも登場します。
 

『S-Fマガジン』2018年2月号No.725【オールタイム・ベストSF映画総解説PART3】

「オールタイム・ベストSF映画総解説」も2004〜2017年までで完結。猿の惑星/創世記』『ターミネーター:新起動/ジェニシスなどはネームバリューを借りただけの作品だと思っていたのですが、あらすじとコメントを読むかぎりでは面白そう。 
 

「『ガールズ&パンツァー』と戦車SF」
 昔はアニメやゲームをもSFに取り込むのを懐の広さだと好意的に捉えようとしていたのですが、今では何にでも首を突っ込むオタクの開き直りにしか感じられなくなってしまいました。

「サイバータンクvsメガジラス」ティモシー・J・ゴーン/酒井昭伸

「からっぽの贈り物」スティーヴ・ベンスン/中村融

「SFのある文学誌(56)未来派の機械賛美、ダダの表現革命」長山靖生

「書評など」
松崎有里『架空論文投稿計画』はタイトルだけで楽しい。タイトルといえば世界幻想小説大賞を受賞したソフィア・サマター『図書館島も惹かれるタイトルです。

「マリッジ・サバイバー」澤村伊智

アーサー・C・クラーク生誕100周年記念特集」

「タイムをお願いします、紳士諸君」アーサー・C・クラークスティーヴン・バクスター中村融

「《白鹿亭綺譚》一九九〇――ジェット推進式タイムマシン」「隔離」アーサー・C・クラーク

「乱視読者の小説千一夜(57)もう一匹のケルベロス若島正

大森望の新SF観光局(59)〈奇想天外〉のころ(その1)」

筒井康隆自作を語る(5)『虚人たち』『虚航船団』の時代(前篇)」
 

       


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