『この島でいちばん高いところ』近藤史恵(詳伝社文庫)★★★☆☆

 近藤史恵作品なのでてっきりミステリかと思っていたら、パニックホラーだったのでびっくりしました。

 理由も正体も不明な存在にただただ襲われてゆくのは、やっぱり怖いです。どっちみち殺されるのなら変わらないと思うかもしれませんが、戦うべき敵がはっきりわかっているほうが心の持ち具合が違います。

 ホラーにありがちな、モンスターめいた殺人鬼ではないところに、却って悲惨さを感じます。ほんとうに日常と地続きな感じで、夏休みに小島に行ったら置いてきぼりになって、そこにたまたま悪人がいた。もともと悪いのは犯人ですし、○○されたから殺すというのも無茶苦茶すぎるとは思いますが、登場人物自身が自分の行動のせいで悪人を殺人鬼にしてしまったと感じているだけに、救われません。

 「少し離れた小島に、遠浅のきれいな海岸があるからね」夏休みに二泊三日の海水浴に出かけた十七歳の少女五人。無人島に渡った彼女らは、砂浜の美しさに酔いしれるあまり帰りの船に乗り遅れ、その島で一晩過ごすことに。ところが、島にはもう一人、男が潜んでいた!――理不尽な体験を通し、少女から大人に変わる瞬間を瑞々しい感性で描く傑作ミステリー。(カバーあらすじより)

  


防犯カメラ