『パディントン・フェアへようこそ』デレック・スミス/宇佐見崇之訳(ROM叢書8)★★★☆☆

 『Come to Paddington Fair』Derek Howe Smith,1997年。

 キャッスル主任警部の許に送られてきた手紙には、劇場の招待状と「パディントン・フェアへようこそ」と書かれたカードが入っていた。素人探偵アルジー・ローレンスとと観劇に出かけたキャッスルの目の前で、事件は起こった。主演俳優マイケル・トレントの撃った「空砲」が、主演女優レスリー・クリストファーの胸を撃ち抜いたのだ。アルジーはすぐさま客席にいた不審者を捕まえた。その男を見たキャッスルが声をあげた。それは七年前の未解決強盗事件の犯人マーヴァンだった。出所してから裏切った女に復讐をしたのか――。レスリーの楽屋でも「パディントン・フェアで会いましょう」というカードを見つけたアルジーは思い出す。「パディントンの市場《フェア》に行く」とは、その昔には公開処刑場に行くことを意味したことを――。だがマーヴァンは犯行を認めたものの、カードを送ったことは否定した。

 何よりもタイトルが素晴らしく、不謹慎ですが公然と復讐するやり方としてはお洒落だと感じてしまいました。復讐と考えれば何の疑問もなく辻褄が合うようでいて、カードだけがピースとして嵌らない、というのもいかにも探偵小説らしく謎めいていて、わくわくします。

 そこから先は良くも悪くも黄金時代の探偵小説(黄金時代の作品ではないのですが)という感じで、関係者が揃いも揃ってさして理由もないのに警察に反抗的だったり嘘をついたり隠しごとをしたりで、こいつら全員グルだろ(^^;と思ってしまいたいくらいに、全員揃って事件を引っかき回してくれました。

 最終的な真相は何だか複雑で、そこまでして復讐したかったんだね、と思いつつも、生前の被害者についてそれほど描かれていないので、被害者の悪女ぶりというよりも、犯人の情けなさばかりが目立ってしまいました。

 【以下ネタバレ*1


 

 

 

 

 

 

 

*1結局真犯人はマーヴァン(&マイケル・トレント)でした。ちなみにマイケルは強盗事件のときのレスリーの共犯者。マーヴァンとマイケルは発砲後に舞台上で拳銃のすり替えをしていた。

 


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