『なおみ』谷川俊太郎・沢渡朔(福音館書店)★★★★★

 なおみは いる/いつも/わたしの うまれる/ずっと まえから/なおみは いた/わたしの そばに

 日本人形の「なおみ」とともに成長する少女の記録……「こどものとも」シリーズのハードカバー復刊。

 途中までは人形を人間のように扱いままごと遊びをする少女の毎日でしかありません。それが一気に変わるのが、少女が大人になり人形を必要としなくなった瞬間を、「とつぜん/なおみは びょうきになった」「なおみは/しんだ」と、少女と人形のままごと視点のまま固定して表現するところです。時間は先に進んでいる、けれども語りはままごと遊びのまま、そして写真もそれまでの風景描写とは違って棺を思わせる心理状態を具現化したものになります。一瞬にして空気が変わったのを実感できました。
 

  


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