乱歩人形でおなじみの人形作家による、泉鏡花作品の絵本化。
灯ともしの翁が一人、社の階に立出づる。蒼ざめた小男が、柏手のかわりに痩せた胸を三度打った。「願いまっしゅ。……お晩でしゅ。」「和郎わの。」「国境の、水溜まりのものでございまっしゅ。」「河童衆、ようござった。いずれ姫神への願いじゃろ。」「仕返しがしたいのでっしゅ。この左の手を折られたでしゅ。」「対手は何ものじゃの。」「畜生! 人間。」
人間にいたずらしようとして見つかった河童が、見つかりそうになってとっさに馬刀貝のいる穴に逃げ込んだ出来事が、タイトルの由来になっています。
人間の身の丈ほどもある魚を放り出して仕返ししようとしたり、大人が三人踊り出したり、わりとコミカルな作品です。
愛嬌のあった乱歩人形や二十面相人形とは違い、この作品の河童人形はグロテスクで醜悪なものです。河童という題材が、この作家さんの持ち味を活かしているとは言い難い、と思いました。代わりといっては何ですが、翁=柳田國男人形に愛嬌があります。
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