『プリズム』貫井徳郎(創元推理文庫)★★★★☆

 とりあえず「『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んだ」という惹句に惹かれて読みました。

 各章のタイトルを見た時点で、何となく構図の見当はつくわけですが、いざ実際にその仕掛けを目の当たりにしてみると、脱帽するほかありません。通常ミステリとして大事なところが『慟哭』と同じく明らかにならないのですが、そんなことが気にならない(というよりも)そんな問題自体に目が向かないくらい、推理の過程と趣向が面白かったです。

 毒入りならぬ睡眠薬入りチョコレート事件、です。

 第三部第四部で明らかになる事実の伏線を第一部ですでにお父さんや山名さんの反応として仕込んであったり、第一部で語られた大家さんの人となりに第二部で判明した被害者に瓜二つの妹という禁じ手を第三部で推理に組み込んだりと、通常の本格ミステリ的な手続きにも手抜かりはありません。

 小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。事故の線も考えられたが、状況は殺人を物語っていた。ガラス切りを使って外された窓の鍵、睡眠薬が混入された箱詰めのチョコレート。彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、事件は容易に解決を迎えるかと思われたが……『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んだ衝撃の問題作。(カバーあらすじより)

  


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