『S-Fマガジン』2018年10月号No.729【配信コンテンツの現在】

「火星のオベリスク」リンダ・ナガタ/中原尚哉訳(The Martian Obelisk,Linda Nagata,2017)★★★☆☆
 ――地球がゆるやかに滅び行くなか、八十歳になる建築家のスザンナは十七年前から、かつて地球の殖民地があった火星に人類滅亡後も残るオベリスクを建てようとしていた。ところがある日、もう人はいないはずの火星に入植者車両が近づいて来た。

 破滅は核戦争などで一気に押し寄せるのではなく、徐々に気づかないうちにもしくは気にしてないうちに取り返しのつかないところまで来てしまう――という終末感に現実感がありました。滅びへの絶望と諦念が希望へと転じるきっかけがあまりにもありきたりで一気に興醒めでした。
 

「乱視読者の小説千一夜(60)あるマイナー作家の肖像」若島正
 マイナーSF作家エリック・ブラウンの怪奇小説はアイデアはよいが後半が下手くそ、ということらしい。

「SFのある文学誌(60)〈文藝時代〉の科学主義 横光利一の神秘科学、新感覚派の怪奇幻想」長山靖生
 

「サヨナキが飛んだ日」澤村伊智
 

「日本SFの新たな地平」小川哲×飛浩隆×東浩紀×大森望
 「誤配を受け取」る、というのは、「興味のなかった作家の作品を思いがけず見つける」というくらいの意味の譬喩でいいのかな?と思ったら、東浩紀の用語でしたか。『ゲームの王国』について、「一作目より伊藤計劃を意識し」たことや、「違和感を読者に抱かせないような説得のロジックが必要」だったと語っています。飛浩隆『零號琴』は「打倒ジャック・ヴァンス的な七〇年代っぽい宇宙の冒険です」。

「幻視百景(16)」酉島伝法

  


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