『伯林白昼夢』フリードリッヒ・フレクサ/垂野創一郎訳(エディション・プヒプヒ 〈ビブリオテカ・プヒプヒ〉第3巻)★★★☆☆

 「Berliner Reiseerlebnis」Friedrich Freksa,1919年。

 訳者後記によれば、江戸川乱歩との往復書簡のなかで小酒井不木が「白昼夢」(1925)に関連して言及している『プラシュナの秘密』(1920)の原型短篇です。なるほどそばかすや柔毛のあるマネキンは、乱歩「白昼夢」ですね。両者に直接の影響関係はないようですが。

 マネキンに一目惚れした語り手が、技術と広告の重要性を説く不快な男に連れられて訪れたのは、マネキンの製造工場でした。生体のサンプルを基に作られたマネキンを持ち帰った語り手は――。

 寝台車の長旅ですでに心は上の空状態だったという冒頭から、すでに夢と幻想の世界に引き込まれているようです。

 製造工程がエログロではなく、エロティックなのに無機質な感じは、乱歩というよりむしろ川端康成「片腕」を思わせました。


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