『イチゴーイチハチ! 1518!』6

『イチゴーイチハチ!』(6)相田裕小学館ビッグスピリッツコミックス)

「美術館に飾れたら、ずっと見ていられるのに」。譬喩にすらなってないような陳腐な表現なのにとても印象的なのは、やはり発言者のキャラクターによるものでしょう。普段そういうことを言いそう(思いそう)にない人物だからこそ、響きます――この巻にはほかにも幸と公志朗以外の脇役たちの恋だったり冒険だったりが収録されていました。そんな脇役たちのエピソードのなか、第46話「三春の冒険」のリレーの最後の場面では、第43話の幸の気持ちが回収されているんですね。こういうのは連載では気づけないところです。第43話のタイトルでは、セイレーンという言葉が悪い意味ではなく良い意味で用いられています。セイレーンの視点に立てば確かにそういうことかもしれないのですね、考えてみると。
 

四季賞ポータブル」
 棚を整理していたら古い四季賞ポータブルが出てきたので、受賞者のその後を確かめてみました。

「二人の記憶」で2010年冬のコンテスト大賞受賞した、みやあやた氏はその後の情報が見つかりませんでした。

「オアシス論」「日陰の氷」で同かわぐちかいじ特別賞を受賞した山下竜一氏は、「フルムーン・ラヴァーズ」で第32回MANGA OPEN大賞を受賞し『モーニング』2012年45号に掲載されたものの、その後は不明。

「絶交」「千代のくちびる」で2011年秋の萩尾望都特別賞と2012春の大賞を受賞した岩見樹代子氏は、『透明な薄い水色に』など百合系の作品で活躍されている模様。

「乗る男」で2011年冬の四季賞を受賞した花輪園人氏は、受賞したシリーズ『たくのこ』でデビュー。

「宇宙のかたすみの物体X」で2012年夏の谷口ジロー特別賞を受賞した、蘇芳浅海氏は、good!アフタヌーンの2013年1月号と4月号に読み切り「恋の盲目」「きおくの箱」掲載。

「思春期シンドローム」で2012年秋の大賞を受賞した赤星トモ氏は、受賞作『思春期シンドローム』でデビューし全3巻で完結。

「彼女の鉄拳」で同萩尾望都特別賞を受賞した恵三朗氏は、現在連載中の医療漫画『フラジャイル』の作画を担当中。

「勉強ロック」で2012年冬の大賞を受賞した山田胡瓜氏は、『AIの遺伝子』等を連載・刊行し、「海の住人」が創元SF文庫の年刊日本SF傑作選『行き先は特異点』にも選ばれていました。

「いつかのあの子」「羽のとりは一緒に集まる」で読み切りデビューしていた四季賞出身の米代恭氏は、作風をがらりと変えて『あげくの果てのカノン』等で活躍されています。

「無常の霧音」で2017年秋準入選した泉仁優一氏は、どうやら同じシリーズが『ヤオチノ乱』と題してweb連載されているようです。

「三途の川でワルツを」「宇宙のライカ」で2015年秋の萩尾望都特別賞と2017年春の大賞を受賞した久野田ショウ氏は、掲載された読み切り「一日三食絶対食べたい」がweb連載される模様。

「変わらないもの」で2017年夏の四季賞を受賞した、なーき氏は現在もデビューに向けて活動されているようです。

「瀬之浦2小のワールドエンド」で出だしで勝負!新人賞を受賞した午後ソーダ(園田俊樹)氏は、読み切り「おわかれの呪い」を掲載したあと『シンギュラリティは雲をつかむ』を連載(全3巻完結)。

「コール」で2016年春の鶴田謙二特別賞を受賞した、こまねずみ氏の現在は不明。著者名が「こまねずみ」だと検索がしづらい。

「クロスオーバー」で読み切りデビューした瀬戸レミ氏は、亡くなられたという情報が見つかりました。

アレグロ」で2015年夏の四季賞受賞した三都慎司氏は、読み切り「ハヤブサ」掲載後、『ダレカノセカイ』を連載、次号で完結予定。

『春と盆暗』でデビューした熊倉献氏の現在はわかりませんでした。

「ボーダーライン」で読み切りデビューしたイトウモロコ氏は商業活動はしていないのでしょうか。

高天原の三姉弟」で読み切りデビューした環縁氏は、読み切り「冬の海」が掲載。

「コインは猫を殺す」で2014年夏の四季賞を受賞した西の智(西のトモ)氏は、「ある朝、とある坂のわたし達」で第24回イブニング新人賞の奨励賞を受賞、『遠隔ライフ』がイブニング2017年4号から新連載されましたが、なぜか次の号からは掲載されず。web上の作品もいま見たらなくなっていました。何かあったのでしょうか。

ヘカトンケイル」で2014年秋の四季大賞を受賞した城山好孝氏は、今年から『ヘカトンケイル』のweb連載が始まりました。

 ほかに『弾丸ティアドロップ』の稲見独楽氏や、他誌だけど『螺旋のドギー』北田おか氏も、新作を読みたいな。同じく他誌で、「セントエルモの火」でネムキ新人マンガ大賞佳作を受賞した、あらまき美里氏はその後も「黒痰虫」「眠り屋敷」「メメント・モリの音」「銀の靴」「キキミミノ実」と順調に読み切りを掲載していましたが、2016年9月号を最後に新作がありません。
 

  


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