『六人目の少女』ドナート・カッリージ/清水由貴子訳(ハヤカワ・ミステリ1867)★★★★☆

 『Il Suggeritore』Donato Carrisi,2009年。

 刑務所に収容されている、明らかに重大犯罪者であるらしき正体不明の男の記録――。

 森のなかから、失踪した五人の少女の左腕だけが発見される。だが、見つかった腕は六本あった――。

 魅力的な書き出しに続いて、子どもの失踪事件にかけては優秀な捜査官ミーラ・ヴァスケスが登場します。容疑者の発見、踏み込み、ぎりぎりでの被害者の救出――これで一気に波に乗れました。

 殺人捜査班ロシュ警部&犯罪学者ゴランたちのチームの森のなかでの描写が、プロファイリングの一環ではあるのでしょうが、どことなく儀式めいたところがあって気持ち悪かったので、ミーラの登場は爽快でした。

 かくして子ども失踪の専門家と連続殺人の捜査班がタッグを組んで捜査に挑みます。読み進めてゆけば、捜査班のメンバーもみな魅力的な人物だとわかってきますし。

 遺体が一つ見つかり、容疑者が一人あらわれ、何かをつかんだように見えて、それもすべて真犯人の手のうち――これが五回も続くのに、少しも飽きないのは、真犯人の真意がまったく読めないからです。警察との一騎打ちに挑む自己顕示欲だとしましょう。それはいいとして、ではゴールが何なのか、が見えないのです。さらには、表に現れる常習的犯罪者のおぞましい犯罪、ミーラの単独行動と問題行動、そしてお決まりの組織の保身、ミーラを尾行する謎の存在etc、もりだくさんでした。

 サイコ・サスペンスなんだから意外な犯人なんて用意しなくてもいいのに、律儀だなぁ、と思いました。

 森のなかで見つかった六本の左腕。それは、世間を騒がせる連続少女誘拐事件の被害者たちのものだと判明する。しかし、誘拐された少女は五人だった。六人目の被害者は誰なのか。失踪人捜索のエキスパートであるミーラ・ヴァスケス捜査官は、高名な犯罪学者ゴラン・ガヴィラとともに特別捜査班に加わることになる。だが、警察の懸命の捜査を嘲笑うかのように、犯人は少女の遺体を次々と発見させて……。フランス国鉄ミステリ大賞、バンカレッラ賞など数々のミステリ賞を受賞した息もつかせぬ傑作サイコサスペンス。(裏表紙あらすじ)

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