『蜘蛛女』(Romeo Is Bleeding,英・米,1993)
ゲイリー・オールドマン主演。殺し屋にレナ・オリン。奥さんにアナベラ・シオラ。マフィアのボスにロイ・シャイダー。愛人役にジュリエット・ルイス。
吹替え版で観ました。
警官のジャックはマフィアに情報を流して小金を稼いでいる悪徳警官だが、愛妻家だ。愛妻家だが女には目がなく、シェリーという愛人を囲っていた。あるとき、逮捕された殺し屋の護送ルートを洩らすようマフィアから指示があった。だが殺し屋モナの色香に迷ったジャックは、モナの逃亡を幇助し、マフィアと警察と殺し屋すべてを騙して丸く収めようとする……。
情けなかっこいい男を演じさせたら天下一品のゲイリー・オールドマンの、情けなかっこよさでは最高傑作です。
ジャックはマフィアと内通し、愛人を囲っているような駄目男ですが、それなのに奥さんのことを愛しているのが伝わってくるのが、惨めなばかりのこの映画のなかでほっこりできる数少ない場面です。アナベラ・シオラも、愛されるに相応しいすごくいい女を演じています。
「誰かを撃つのは、結婚するのと同じだ。一生そいつに縛られることになる」何度きいても名セリフです。それにしてもジャックは悲しいくらいに悪い方悪い方へと転がってゆきます。そういう意味では邦題の『蜘蛛女』というのも、勘所は外してないのかもしれません。蜘蛛の巣に絡め取られてどうにもならなってしまう状態こそ、まさにこの映画のジャックでしょうから。
実際のところは明らかではありませんが、奥さんのナタリーはやはり殺されちゃったんだろうな、とは思います。モナがジャックに「あんたと同じように死んでいる」と言ったのは比喩ではなくて。現実はそこまで甘くはないでしょう。生きていると思いたいけれど。
最後のシーンは何度観ても泣いてしまいます。「ときどきもう少し長くいてくれることもある」。
「ナタリーへ」という手紙が額に入れてあったということは、手紙を出していないということで、だったら手紙に書かれたホリデイダイナーに奥さんが来るはずなんかありません。でも待っている。たとえ生きていても、来てくれないと頭ではわかっているけど。
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