『碧空《あおぞら》のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート』福田和代(光文社文庫)★★★☆☆

 帯にも“まさかの”と書かれてありますが、福田和代のイメージからはまるで想像のつかない、日常系の、オシゴト系の、小説でした。ただしミステリとしてはかなりゆるく、謎と推理と解決というよりは、騒動とその顛末といった感じです。

 あとがきによれば、別作品の取材相手から航空音楽隊の話を聞き、小説にしてみたということだそうです。

 第一話は楽譜がなくなっているという話です。自衛隊であるがゆえに単なる「紛失」では済まされず、盗める者も限定されるという状況。自衛隊や音楽隊ならではの仕組みを用いて「突然の定年退職」という謎を引き出しています。

 第二話で描かれるのは、佳音の学生時代の不思議なエピソードです。不在の寮生のところに届けられた「愛の賛歌」の目覚まし時計。夜中に突然ばらばらに明かりがつき始めた校舎の窓。こちらもきっちり音楽に関係のある真相でした。

 第一話は定年退職にふさわしく、ちょっといい話ふう。第二話は学生時代にふさわしく、青くて青くてこじらせてる話。学生時代はともかく、社会人になってからもこんななのはイタい。明美が怒るのももっともです。

 カバーイラストは小川麻衣子

 航空自衛隊航空中央音楽隊でアルトサックスを担当する鳴瀬佳音《なるせ・かのん》は、ちょっぴりドジだけど憎めない女性隊員。練習と任務の演奏会に明け暮れる中、数々の不思議に遭遇する。失われた楽譜の謎、楽器のパーツ泥棒、絵葉書に込められた見えないメッセージ……。個性豊かな仲間たちと共に“事件”を解決! クライシス・ノベルの名手が意欲的に描く、爽やかで心温まる物語。(カバーあらすじ)

  ・ [楽天] 


防犯カメラ