『王妃の帰還』柚木麻子(実業之日本社文庫)★★★★☆

 クラスのトップに君臨する〈王妃〉。同級生を陥れようとした陰謀がばれて権力の座から失墜した王妃を、地味グループの範子たちが受け入れ先となって迎え入れるが……。

 学級を王制になぞらえたこうした筋書きだけでも面白そうで、判官贔屓の日本人にはぐっとくるところがあるのですが、それほど素直には話は進みません。なにせこの王妃、王妃らしいところは気位と輝きだけで、人間としてはびっくりするくらい幼稚で魅力のない人間なのです。

 仲間はずれにされて落ち込んでいるかと思い、ちょっと優しさを見せれば、ころっと態度を変えてたちまち傍若無人な地を見せるので、手を差し伸べたほうが苦笑いを浮かべざるを得ません。

 幼稚で魅力のない、とは言い過ぎで、要するに王妃でも何でもなく、ただの自分大好きなわがまま中学生なわけですが、そこで見捨てないのが主人公たちの強さです。女子力スキルの見せ所です。

 グループ崩壊の危機も何のその、王政復古をプロデュースする、という目標に向かって結束を固めることになりましたが――。

 道のりは平坦ではありません。範子の母とチヨジの父をくっつけようとする「ロッテ作戦」ともども、人間を操ることなど簡単にはできないからです。

 紆余曲折を経て、みごと王政復古はなされますが、それはもちろん、かつての絶対王制などではありません。

 私立女子校中等部二年生の範子は、地味ながらも気の合う仲間と平和に過ごしていた。ところが、公開裁判の末にクラスのトップから陥落した滝沢さん(=王妃)を迎え入れると、グループの調和は崩壊!範子たちは穏やかな日常を取り戻すために、ある計画を企てるが……。傷つきやすくてわがままで――。みんながプリンセスだった時代を鮮烈に描き出すガールズ小説!(カバーあらすじ)

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