「鉄のつめ」(1952~1953)
――手術で救った投手からもらったサインボールは、登の父親・井上博士の宝物だった。父親の講演旅行中に、小学校のみんなに自慢したくてこっそり持ち出したサインボールを、悪少年の立次に奪われてしまった。登は奪い返しにいくが、もみ合っている最中、立次は崖から落ちてしまう。怖くなった登はそのまま逃げ帰る。次の日、立次の父親である「鉄つめ」が立次の行方をさがしていた。立次は生きているのか? だとしたら鉄つめの目的は?
まぼろし部落シリーズでおなじみの、三橋一夫のジュニア小説。当然ながら、いま大人が読んでめちゃくちゃ面白いと感じるようなものではありません。狙われているのは世界的大発明なのに、悪役が所詮チンピラなので、スケールも小さい。とはいえ、この、身内でがんばる感じはいいですよね。唐突に出てくる「昔はスポーツマン」設定。お父さんは頭がいいだけではなく強かったのだ。警察署長も学校の先生の身内。みんなで仲良く、力を合わせて。少年小説の理想型です。