『シャーロック・ホームズの愉しみ方』植村昌夫(平凡社新書)★★★★☆

 著者がブログで発表していたホームズ関係の文章から主要なトピックを抜粋してまとめたものです。

 著名人のホームズ・エッセイ&論考。「バリツ」とは何か? 「プロの美女」「アーミー・コーチ」の訳語の問題。大まかに言ってこの三部から構成されています。

 エッセイのなかにはすでに翻訳のある著名なものもありますが、新訳でまとめて読めるのはありがたい。

 バリツとは何か? 「武術」の訛り、「バーティツ」の書き誤り――これだけでは単なる註釈の域を出ません。著者は当時のイギリスにおける柔術の受容にまで踏み込み、「ホームズ」がいつどこでバリツを学んだのか、を考察します。柔術と柔道はどう違うのか――についても、辞書的な定義が必ずしも正しいとは限らないことを教えてくれます。

 訳語に関しても著者のスタンスは変わりません。「アーミー・コーチ」とは何であるのかを考えるに当たり、当時のイギリスの軍隊がどのようなものであったのかを明らかにしたうえで、正しい訳語を導き出しています。

 本にまとめられていないそのほかの文章は、著者の「翻訳blog」http://sanjuro.cocolog-nifty.com/blog/cat1348989/index.htmlで以前は読むことができたのですが、現在は閉鎖されてしまいました。
 

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