『マノロブラニクには早すぎる』永井するみ(ポプラ文庫)★★★☆☆

 一応はミステリの形が取られているものの、海外文学希望だったのに女性ファッション誌に配属されてしまった主人公が、偶然から関わりになるカメラマンについて、「本当に撮りたかったのは野生動物だったのかもしれないが、(中略)女性ファッション誌での撮影も引き受け、(中略)真摯な姿勢で仕事に取り組んでいた」「それがプロっているものなんだ」という当たり前のことに気づいてゆくような、成長小説でもあります。

 目を肥やすために銀座を歩き回り、撮影場所の予約日を間違えた災いを転じて福と為し、同僚の妬みに足を引っ張られ、主人公は少しずつ成長してゆきます。

 タイトルになっているマノロラニクとは、憧れの編集長が履いている憧れの靴のブランド。

 主人公にはマノロラニクはまだ早すぎるようですが、似合っていたはずの登場人物もまた別のところで無理をしていたようで、一生懸命に生きるというのは難しいものです。

 小島世里は念願の出版社に就職を果たしたものの、まったく興味がないファッション誌編集部に配属されて落ち込む日々を送っていた。だが、父親の死に不信を抱く少年・太一との出会いをきっかけに、世里の日常は大きく変わっていく――さわやかでほろ苦い青春ミステリー。(カバーあらすじ)
 

  


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