『琅邪の鬼』丸山天寿(講談社文庫)★★☆☆☆

 古代中国を舞台にした――というと、すぐに伝奇小説を連想しましたが、本書にはさほど伝奇要素はありません。

 確かに巫医は登場し、卦を立てたり思念を聞いたり五里霧を起こしたりします。忍者のような戦闘集団も登場します。真相はどろどろしたものでした。

 けれどどろどろしているわりには作品全体のタッチが明るく軽いので、読みやすいし読後感は悪くないのですが、内容と作風にちぐはぐな印象を受けてしまいました。どろどろに相応しい文体、もしくは作風に相応しい真相を用意してほしかったところです。

 死体消失や死者復活や家屋消失といった大がかりな謎が出てきます。死体消失や死者復活に関しては、当時の状況や作品内の人間関係を鑑みるにしても、もう少し確認ぐらいしろよ、と思ってしまいましたし、家屋消失に関しては「Why」の理由があまりにも現実的すぎて、ミステリの解答としては物足りませんでした。

 秦の始皇帝に不老不死の仙薬の入手を命じられた伝説の方士・徐福の塾がある、山東半島の港町・琅邪で奇怪な事件が続発。求盗(警察官)の希仁と、易占術、医術、剣術などさまざまな異能を持つ徐福の弟子たちが謎に挑む! 古代中国の市井の人々を生き生きと描いた痛快ミステリー長編。メフィスト賞受賞作。(カバーあらすじ)
 

  


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