『ガソリン生活』伊坂幸太郎(朝日文庫)★★★★☆

 本書ではなんと自家用車が語り手を務めます。

 とうぜん視点に限りがあるので、情報は断片的にしか伝わってこない――かと思いきや、車には車のネットワークがあるらしく、自動車間の噂話を主に駐車場で仕入れており、むしろある部分では人間よりも情報通だったりしました。

 事件とは直接には関係のないところでも、『激突!』や『クリスティーン』といった映画が自動車間では実際にあったことのように都市伝説として語られていたりと、自動車たちの情報網は独特です。

 二輪車とは言葉が通じなかったり、列車は尊敬の的だったり、自動車界には自動車界の決まり事もあるようです。

 カラスと喧嘩する近所のおばさんのキャラが濃く、愛すべき人なのですが、単なる面白キャラではなく、ちゃんと喧嘩のエピソードが最後になって活かされていました。

 エピローグにはほろりとさせられました。

 文庫カバー裏には書き下ろし掌篇「ガソリンスタンド」が印刷されています。

 のんきな兄・良夫と聡明な弟・亨がドライブ中に乗せた女優が翌日急死!パパラッチ、いじめ、恐喝など一家は更なる謎に巻き込まれ……!? 車同士がおしゃべりする唯一無二の世界で繰り広げられる、仲良し家族の冒険譚!愛すべきオフビート長編ミステリー。(カバーあらすじ)
 

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 ガソリン生活 


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