京極夏彦による遠野物語えほんシリーズですが、中川学のファンなので、そちら目当てで読みました。遠野物語の第三段と第七段が絵本化されています。
まずは第三段・山女の話です。文章には書かれていませんが、当然ながら猟犬も一緒なんだな、と気づかされます。そして腰には獲物も提げられていました。京極夏彦らしい、ページめくりを意識した文章も効果的です。しかし何と言っても圧巻は、やまおとこの登場シーンでしょう。山男は月よりも高いというのか、それとも月のように見えるものは爛々と光る目なのか、現実の風景ではありえないものを描くことで夢幻とも現実ともわからない山男の恐ろしいスケールの大きさが感じられます。
第七段。第三段でもそうでしたが、「驚くほど色が白い」と書かれていながら描かれた肌は黄色いのでした。この第七段でも、山男の「瞳の色が違っていて」と書かれながら、描かれているさらわれた娘の瞳が青いのには、戦慄しました。何かが、価値観が、現実の世界とは変わってしまっています。
ほかの画家さんが描いているシリーズのほかの作品「まよいが」「かっぱ」「ざしきわらし」にも興味が出てきました。
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