『死を忘れるな』ミュリエル・スパーク/永川玲二訳(白水Uブックス 海外小説 永遠の本棚)★★★★☆

 『Memento Mori』Muriel Spark,1959年。

 歳を取れば丸くなる。脂っ気がなくなる。――そんなのは嘘です。

 何しろ本書に登場する老人たちは、揃いも揃ってわがままで生に執着しています。恋の鞘当てみたいな場面まであって、すべての場面の後ろに(年齢)をつけると面白味が増してきます。

 一応のところはデイム・レティのところに「死を忘れるな」と電話をかけてきた怪人物の正体を探る、という謎がないこともないのですが、老人たちはどちらかというと身のまわりのことに大忙しという感じです。

 ちょこちょこ年齢を気にするシーンがあって可笑しかったです。

 「死ぬ運命を忘れるな」と電話の声は言った。デイム・レティ(79歳)を悩ます正体不明の怪電話は、やがて彼女の知人たちにも広がっていく。ある者は疑心暗鬼にかられて犯人探しに躍起となり、ある者は悠然と受け流し、ある者は彼らの反応を記録して老年研究の材料とした。謎の電話が老人たちの生活に投じた波紋、登場人物ほぼ全員70歳以上の複雑な愛憎関係を、辛辣なユーモアで描いたイギリス小説の傑作。(カバーあらすじ)
 

  


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