『完全犯罪に猫は何匹必要か?』東川篤哉(光文社文庫)★★★★☆

 豪徳寺邸で起こった十年前の未解決殺人事件、探偵による豪徳寺家の猫さがし、十年前と同じビニールハウスでの殺人事件、どれも無関係ではないに決まっているのだけれど、少なくとも序盤では関連性は明らかになりません。

 それどころか鵜飼と砂川警部もなかなか顔を合わせません。すぐにでも掛け合いが始まるのかとばかり思っていたので、これは意外な展開でした。警察サイドが事件の捜査なのは当然として、鵜飼の登場シーンは予想だにつかないものでした。登場するだけで笑える探偵って……^^;。恰好から入る鵜飼探偵らしいといえばらしいのですが。

 さていざ探偵と警察が顔を合わせてみれば、猫さがしは事件に関連があるどころか、ずばり核心だったと言ってもいいでしょう。

 猫を追っていた鵜飼と事件を追っていた砂川警部が、それぞれ補い合って推理を披露する解決編も見事です。二時には現場にあった招き猫が、二時半には消えて、三時にはまた現れた謎の手がかりが、ただのギャグだと思われたシーンにあったことには舌を巻きました。現場が招き猫屋敷ゆえに猫づくしは当然な事件とはいえ、第三の殺人の猫がらみには脱帽です。必然性、トリック、笑い、すべてが融合していました。

 『招き寿司』チェーン社長・豪徳寺豊蔵が破格の金額で探偵・鵜飼杜夫に愛猫の捜索を依頼した。その直後、豊蔵は自宅のビニールハウスで殺害されてしまう。なぜか現場には巨大招き猫がおかれていて!? そこでは十年前に迷宮入りした殺人事件もおきていた! 事件の鍵を握るのは“猫”? 本格推理とユーモアの妙味が、新しいミステリーの世界に、読者《あなた》を招く!(カバーあらすじ)
 

  


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