『ケシゴムは嘘を消せない』白河三兎(講談社文庫)★★★☆☆

 タイトルが印象的だった講談社ノベルス『角のないケシゴムは嘘を消せない』の全面改稿版です。別作品といっていいほど変わっているとのこと。

 離婚したばかりの「俺」の部屋に逃げ込んできた透明人間との共同生活。組織に追われる透明人間に関わるうちに、主人公は妻子との関係を修復してゆきます。SFXや特撮のような設定に、子どもを愛せない父母というわりとヘビーな内容を重ねてゆくのは、ここ十数年のハリウッド映画の手法でしょうか。いやハリウッドに限定されない定番かな。でも日本の映画やドラマはその辺がド下手くそなので、本書のように上手くいっている作品が際立ちます。

 ミステリ味の利いた軽い(けれど伏線の利かされた)仕掛けが、快い読後感を後押ししていました。

 離婚が成立して一人やけ酒を呷《あお》る男の部屋に、女性の透明人間が侵入する。体が見えない上、何でも消してしまえる特殊能力を持つ女は、謎の「組合」に自分が追われていると男に助けを求めた。奇妙で不思議な同棲生活の行方と「見えない」恋の結末は?(カバーあらすじ)
 

  


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