『小説新潮』2017年12月号【ファンタジー小説の現在】

 勝山海百合の作品「落星始末」目当てで買ったのですが、読まずにいるうちに『短篇ベストコレクション 現代の小説2018』に収録されてしまったので、ほかの作品だけ読みました。……と言ってもあまり読むものがありません。

『隣のずこずこ(抄)』柿村将彦
 ――隣町の曽呂木高校に落ちて隣隣町の玉留高校に通うとなると、ご近所から嘲笑を浴びることになる。帰省している姉が、「一人暮らしなんかクソやわ!」と愚痴をこぼしている。私が玉留へ行けば二人で暮らせて、家賃や光熱費も一部屋分で済むからいいことずくめだ。いずれにせよ勉強しなければならない。そんなとき綾子から電話がかかってきた。「あ、はじめ? 家まで来て欲しいんやけど」「なんで?」「うーん。権三郎狸の話、知ってるやろ? あれがな、今来てるの」

 日本ファンタジーノベル大賞2017受賞作の冒頭掲載。昔話のとおり権三郎狸が村を壊し村人を飲み込むと宣言し、その通りにし始めるが、村人たちの多くはそれを受け入れ……というあらすじだけ読むと面白そうなのですが、掲載されている冒頭を読むかぎりでは、語り手がだらだらしゃべってなかなか話が進まず面白いところまで行かないまま終わってしまいました。
 

  


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