『The Door into Summer』Robert A. Heinlein,1956年。
彼女にふられて冷凍睡眠に入る。飲食店に猫を連れ込んで悪びれない。子どもっぽいというか何というか、絵に描いたような自分大好き人間です。さて、冒頭でこんなしょーもない人間に描かれた主人公が、冷凍睡眠の果てにいかなる人間に成長してゆくのか――いやでもこういう展開を想像してしまいますが、成長しません、この人。
少し先に進めば、一応のところ、ただ単にふられたわけではなく、友人(共同経営者)と彼女(?)に騙されたのだ、ということはわかりましたし、冷凍睡眠も自分で計画していたあとにさらに彼女たちから強引に実行されてしまったということもわかりましたが。
それにしたって騙されたあとで大事な株式を預けるのに、その友人の(義理の)娘を預け先に選ぶというのがわけがわかりません。こんなの完全にその後の展開のためだけの都合でしょう。
その後に登場するタイムマシンとタイムトラベルに至っては、あまりにもとってつけのご都合主義過ぎて、失笑すら出ませんでした。
何の工夫もなく、元の知識をもとに人生をやり直してハッピーエンド。友人の娘とのくだりは蛇足どころか蛇角、蛇髭、蛇毛……。
劣等感にさいなまれた人の願望充足がだらだらと書かれているだけでした。ああ気持わるい。
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に大切な発明までだましとられたぼくの心は、 12月の空同様に凍てついていたのだ。そんな時、「冷凍睡眠保険」のネオンサインにひきよせられて…永遠の名作。(カバーあらすじ)
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