『鬼神伝 鬼の巻・神の巻』高田崇史(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

 ミステリーランドの第3回・第4回配本です。〈きじん〉ではなく〈おにがみ〉と読むのですね。

 平安時代にタイムトリップさせられた中学生の天童純は、雄龍霊(オロチ)を操れる一族の末裔であることを見込まれて、藤原基良らから鬼退治を命じられます。しかし純は「鬼」を殺さなくてはならないことに疑念をぬぐえません。やがて戦いのさなか、鬼の娘に出会い……。

 平安時代や鬼神といった題材だけなら伝奇小説のようですが、そこは少年少女のためのミステリーランドですから、さほどドロドロしてはおらず、どちらかといえばヒロイックファンタジーに近いです。少年の感情の高ぶりによってオロチが目覚め、少年が手に取ると草薙剣が光を帯びる場面などは、まさに少年誌のヒーローです。

 高田氏らしく、記紀神話や各種の鬼退治物語に独自の解釈を加えているところに特色があります。天つ神と国つ神の構造を、支配者である殿上人とまつろわぬ「鬼」や、仏教と土着の神、といった構造に重ねているところなどはいかにもそれらしい。

 謎解き度はさほど高くなく、『鬼の巻』の足跡のない殺人や、『神の巻』の裏切者さがしと、あとがきの暗号くらいです。

 現在は第三作『龍の巻』も出ているようです。

 京都の中学に転校してきて三ヵ月、天童純に友だちはいない。純の胸には生まれた時から赤紫色のふしぎな形をしたあざがあった。ある日、いじめっ子に追いかけられるうち、純は東山の麓ふかくに建つ古びた寺に迷い込み、密教僧・源雲によって時空を超え平安の都に飛ばされてしまう。胸に勾玉の形をしたあざがある純こそ封印された龍・オロチを解きはなち、鬼を退治するべく選ばれた者だという。桃太郎、一寸法師……。彼らはなぜ鬼を退治するのか。鬼とはいったい何者なのか!?(『鬼の巻』函あらすじ)

 現代に戻った天童純が、今まで自分の身に起こったことが全部夢だったのではないかと疑い始めたころ、純は六道珍皇寺に現れた小野篁によって平安時代に呼び戻され、再び鬼神たちとともに貴族との戦いに加わることになった。一方貴族は、鬼神たちを封じ込めるために三種の神器を揃えようと、最後の一つ、純の持つ剣を血まなこになって探していた。とてつもない破壊力を持つ「弥勒」を招致しようとする貴族たちとの激しい戦いの中、純は今まで一緒に戦ってきた仲間を失う。素戔嗚尊の血を引く純が、命よりも大切なものがあると気づいたとき……。(『神の巻』函あらすじ)
 

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