自然消滅したかと思われていた〈ミステリーランド〉の最終配本。
7・8とタイトルにあるので心配ないとは思いますが、読む順番を間違えるとネタバレになってしまうのでお気をつけ下さい。
恩田陸らしい、閉ざされた空間内での少年少女たちの日々が幻想的に描かれています。作風は幻想的ながらも謎はきちんと明らかにされますが、その明かされ方があっけなくて尻すぼみな印象を受けてしまいました。唐突に明かされるSF的/ホラー的な設定も取ってつけ感があまりにも強く受けつけがたいものでした。
謎なんか解かれなければいいのに。
亜季代が失踪した理由や、光彦がみどりおとこにされた忠告など、すっきりしないところが多々ありました。
少年少女たちの不安を、身近な死と連動させて描くことで、横溢する不穏な空気をただの雰囲気だけに終わらせていないところは見事というほかありません。
同じ「お城」内の、『七月』が少女パート、『八月』が少年パートになっています。
坂道と石段と石垣が多い町、夏流《かなし》に転校してきたミチル。六月という半端な時期の転校生なので、友達もできないまま夏休みを過ごす羽目になりそうだ。終業式の日、彼女は大きな鏡の中に、緑色をした不気味な「みどりおとこ」の影を見つける。思わず逃げ出したミチルだが、手元には、呼ばれた子どもは必ず行かなければならない、夏の城――夏流城《かなしろ》での林間学校への招待状が残されていた。ミチルは五人の少女とともに、濃い緑色のツタで覆われた古城で共同生活を開始する。城には三つの不思議なルールがあった。鐘が一度鳴ったら、食堂に集合すること。三度鳴ったら、お地蔵様にお参りすること。水路に花が流れたら色と数を報告すること。少女はなぜ城に招かれたのか。長く奇妙な「夏」が始まる。(『七月に流れる花』函あらすじ)
夏流城《かなしろ》での林間学校に初めて参加する光彦《てるひこ》。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染の卓也、大柄でおっとりと話す耕介、唯一、かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正だ。到着した彼らを迎えたのは、カウンターに並んだ、首から折られた四つのひまわりの花だった。少年たちの人数と同じ数――不穏な空気が漂うなか、三回鐘が鳴るのを聞きお地蔵様のもとへ向かった光彦は、茂みの奥に鐘を持って立つ誰かの影を目撃する。閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き……? 彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。短くせつない「夏」が終わる。(『八月は冷たい城』函あらすじ)
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