ミステリーランドのなかでは、もっとも子どもに向けて(子ども向けという意味ではなく)書かれている作品でした。死刑制度の問題、人が人を殺すという問題、ミステリィと現実の違い、ゲームやクイズと現実の違い……伯爵の正体について思わせぶりにしておきながら結局は正真正銘の探偵だったというのも、情報に惑わされるな、真実を見通せる目を持てというメッセージと捉えられなくもありません。わたしたちは少年探偵団のような安全圏に生きているわけではないのだから。
伯爵の正体自体が曖昧模糊としていて、そのために事件の性質も日常の謎なのか誘拐なのか何なのかもはっきりしないので、探偵ものの謎解きミステリとはひと味違った読み心地がありました。
夏休み直前、新太は公園で出会った、夏というのに黒いスーツ姿の探偵伯爵と友達になった。奇矯な言動をとるアールと名のる探偵に新太は興味津々だ。そんな新太の親友ハリィが夏祭りの夜に、その数日後には、さらに新太の親友ガマが行方不明に。彼らは新太とともに秘密基地を作った仲間だった。二つの事件に共通するのは残されたトランプ。そしてついに新太に忍びよる犯人の影!(函あらすじ)