コロナの影響で一か月遅れの7月号です。
マーク・グルーニー『レッド・メタル作戦始動』刊行に伴う冒険小説特集。掲載されているのは思い出話ばかりで「新時代」と言えるのは『レッド・メタル作戦始動』関連の一記事のみ。エッセイには霜月蒼・月村了衛・福田和代らが寄稿。少なくともこの人たちの文章は思い出ばかりではなく前を向いています。
「病気になるということ」ヴァージニア・ウルフ/片山亜紀訳
コロナ流行に寄せて、ヴァージニア・ウルフのエッセイの新訳。
「おやじの細腕新訳まくり(18)」
「ミスター・フィンドレイターの三つの夢」A・A・ミルン/田口俊樹訳(The Three Dreams of Mr. Findlater,A. A. Milne,1949)
――四十八歳の既婚者で銀行の支店長であるフィンドレイターには大層気に入っている夢がふたつあった。ひとつは自分に関する夢。もうひとつは妻のミニーが突然死する夢だ。そしていつしか、ミニーを殺したいという第三の夢が生じるようになった。その夢を身ごもったのはクラブのトイレの中だった。その後、誰も乗っていないセダンの中から拳銃を見つけたときから三番目の夢ははじまった。
「虹をつかむ男」よりも夢のない惨めなおっさんの夢想が実現してしまうアイテムを手に入れるものの……夢は夢という当たり前の結末のその先に、運命の皮肉が待ち受けていました。
「ミステリ・ヴォイスUK(119)コロナ危機に読む『いいなづけ』」松下祥子
「迷宮解体新書(116)福田和代」村上貴史
「今月の書評」
◆『あの本は読まれているか』ラーラ・ブレスコットは東京創元社が力を入れて紹介しているので以前から気になっている作品です。『修道女の薔薇』キャロル・オコンネルは、マロリー・シリーズ第12作。あの名作『クリスマスに少女は還る』と同じく、「誘拐された子供の戦いを描いた小説」。
◆『緋色の残響』長岡弘樹は、「傍聞き」の「母娘コンビが再登場するシリーズ」。
◆『三体II 黒暗森林』劉慈欣も出ました。
◆『大阪圭吉自筆資料集成』小野純一編が、古書店の盛林堂書房より刊行されています。
◆『大忙しの蜜月旅行』セイヤーズ創元推理文庫の新訳版には「〈トールボーイズ〉余話」も併録。『ハーリー・クィンの事件簿』も創元推理文庫からの新訳です。クィンとサタスウェイト「二人の関係は、北村薫の“円紫さんと私”の先達だったよう」という新保氏の考察が面白い。