『ボロゴーヴはミムジイ 伊藤典夫翻訳SF傑作選』高橋良平編(ハヤカワSF文庫)★★☆☆☆

 副題どおり伊藤典夫SFマガジンに訳載した作品から選ばれた作品集ですが、さすがに内容が古くさ過ぎるのは否めません。

「ボロゴーヴはミムジイ」ルイス・パジェット(Mimsy were the Borogoves,Lewis Padgett,1943)★★★☆☆
 ――未来の科学者の実験によって1942年に送られたおもちゃ箱を拾ったのは、小学生のスコットだった。両親の心配をよそにスコットと妹のエマはおもちゃで遊び続けるが、やがて兄妹は自分たちだけのコミュニケーションを取り始める。

 赤んぼうはまだ人ではない、という発想をベースにした言語SFで、それだけならそれで終わりなのですが、そこに言葉と言えばこの人、という人をからめているところがユニークです。
 

「子どもの部屋」レイモンド・F・ジョーンズ(The Children's Room,Raymond F. Jones,1947)★★★★☆
 ――息子のウォルトが借りてきた本を何気なく読み始めたスターブルックは、その特異な内容に引き込まれた。翌日、風邪を引いた息子の代わりに本を返しに行き、その本がミュータントを教育するためのものだと知る。来たるべき未来に人類を守るために異能力者を集めているというのだ。

 これは凄いです。話が進むごとにどんどん凄みが増してゆきます。初めはミュータントが存在するというだけの話にしか見えませんでしたが、やがて家族の物語となり、最後には家族はもとより人間とは何かという問題にまで行き着いてしまいます。そしてスターブルック夫妻の出した結論が、かなり怖い、のです。
 

「虚栄の街」フレデリック・ポール(The Tunnel under the World,Frederik Paul,1955)★★★☆☆
 ――バークハートは爆発に巻き込まれる悪夢から目を覚ました。CMやトラックが冷蔵庫の宣伝をがなり立てている。同僚と話している最中や、地下室の異常に気づいた瞬間、バークハートは眠りに落ちていた。そんなことが何度か続いた。

 一企業が製品モニターのために町の住人ごと閉じ込めて何度も同じ日を繰り返させながらまんまとモニター結果を収集している――という発想は面白かったのですが、そのあとは町や住人自体が○○で……というパターンになるのが時代を感じさせます。
 

「ハッピー・エンド」ヘンリー・カットナー(Happy Ending,Henry Kuttner,1948)★★☆☆☆
 ――ジェイムズ・ケルヴィンは時間旅行者に金を与える代わりに、未来人の精神に接触できるようになった。

 ルイス・パジェットの別名義。
 

「若くならない男」フリッツ・ライバー(The Man Who Never Grew Young,Fritz Leiber,1947)★★★★☆
 ――なぜわたしだけが若くならないのだろう。初めて発掘を見たときのことは覚えている。ある老女が古い墓に通い始めた。月日が過ぎ、墓参は頻繁になり、老女は悲しみを大きくした。とうとう墓石が真新しくなり、牧師と葬儀社と医師が手続きをとり、からの霊柩車が出発した。

 時間が逆廻しになった世界、ただそれだけのことが綴られているだけなのですが、それが地球規模で描かれているために、壮大さのあまり胸を打たれます。
 

「旅人の憩い」デイヴィッド・I・マッスン(Traveller's Rest,David Irvine Masson,1965)★★★☆☆
 ――そこは境界に近い戦区だった。解任されたHは南に行って仕事をさがすことにした。すでに九十分はたっていた。むこうの時間に換算すれば一分三十秒あまりだ。

 南と北で時間の流れが違うという極めてSFらしい設定に、人生の悲哀がブレンドされています。
 

「思考の谺」ジョン・ブラナー(Echo in the Skull,John Brunner,1959)★★☆☆☆
 ――ロウエル夫妻はサリイ・アーカットに新しい体をさがさせた。サリイを保護したジェンキンズは、サリイの妄想が死に直面した記憶ばかりだと気づき、悪意ある宇宙人に狙われているのだと考える。

 ある意味では古き良きSFらしさを楽しめる作品、と言えないこともありません。よくテレビ東京で日中に放映されていたB級映画のテイストたっぷりです。

  


防犯カメラ