『インハンド』04、『Q.E.D. iff』16

『インハンド』04 朱戸アオ(講談社イブニングKC)
 「プシュケーの翅」の続きと「デメテルの糸」全篇です。

 恵良(内調の牧野さんと一緒にいる黒服黒眼鏡)の友人・国際テロリズム対策課の米谷が死んだ。部屋に実験設備があったことからテロリストとの内通を疑われたが、恵良は友人の無実を信じていた。紐倉は部屋にあった蝶のサナギを持ち帰り、真相を明らかにする(プシュケーの翅)。
 限界集落・久地木村に新興宗教家・幸田が移り住み、村は信者たちに乗っ取られようとしていた。幸田は村長選にも出馬するが、そんななか現役村長が全裸で走り回るという事件が起こった。紐倉たちは宗教団体に潜り込むが……デメテルの糸)

 前巻で推理ものの解決編のパロディで始まった「プシュケーの翅」、今回は恵良や紐倉による生物豆知識がありました。後ろ姿でも感情がわかるように、高家の顎のあたりに笑った口が描かれている(p.11)漫画表現が面白い。雑誌のカラー回に合わせてのクライマックスだったでしょうに、単行本では白黒なのが残念です。「デルメルの糸」には幻覚キノコを使った宗教団体が登場。デルメルという名は知りませんでしたが古代ギリシアの女神であり、タイトルはデルメルとペルセポネに捧げる秘儀で幻覚物質が飲まれていたことに由来するようです。糸はキノコの菌糸ですね。潤月さんが運転すると人格変わってしまいました。キノコを飲まされた影響で、紐倉の過去も浮かび上がってきました。
 

『Q.E.D. iff―証明終了―』16 加藤元浩講談社コミックス少年マガジン
 「時計塔」「マドモアゼル・クルーゾー」の二篇収録。

 時計塔にあった格安喫茶店が移転し、時計塔にはゲストハウスがオープンしたが、立地の悪さと経営センスの無さからたちまち火の車となった。ゲストハウス経営者の手巻に資金を融資していた投資家の台場が失踪し、直後に手巻が夜逃げした。燈馬と可奈が調べるうち、時計塔では過去に二件の殺人事件と四件の失踪事件が起きていることがわかった(時計塔)。
 美術館を見学中のパリ警視庁クルーゾー警部の目の前で白昼堂々絵画が盗まれた。一度は謹慎を命じられた警部だったが、犯人を目撃していることから捜査を担当することになった。盗難美術品データベースのプログラム修正を頼まれていた燈馬と可奈もパリに渡り、盗んだ絵を買い取らせようとする犯人との取引に同行した(マドモアゼル・クルーゾー)。

 燈馬がさほど感情豊かではないこともあり、また一話が単行本半分のページ数なこともあり、比較的あっさりした話が多い『Q.E.D.』シリーズですが、思えば第1巻「銀の瞳」がすでに犯人の強い執念を感じる作品でした。本巻収録の「時計塔」もまた、時計塔で事件が頻発する理由・ラストシーンの台詞など犯人の執念・妄念が極めて印象深い作品でした。「マドモアゼル・クルーゾー」はタイトル通りドジっ子刑事が活躍する物語ですが、飽くまで怪我の巧妙な本家クルーゾー警部よりは意図的にドジを演出した「青い十字架」等のブラウン神父に近いでしょうか。
 

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