『The Eye of Osiris』R. Austin Freeman,1911年。
フリーマン長篇2作目。
男が一人失踪した。希望する場所に埋葬されるという条件を満たせば、財産は弟に、満たされなければ財産は別の人間に――という奇妙な遺言を残して。死んでいるのか生きているのかわからないため、遺言は宙ぶらりんのまま。相続人ゴドフリー・ベリンガムを診療したバークリー医師は、恩師であるソーンダイク博士に件の遺言の話をする……。
謎や犯人探しはあまり重要ではありませんでした。問題の遺言に関する法律的な興味と、語り手のバークリー医師とベリンガムの娘の恋愛的な興味、で引っ張り、最後にソーンダイク博士の推理――という、出来不出来以前にたいへんに古めかしい作品ですが、そもそものきっかけが遺言にあるので、俎上に上げられているのが犯人探しではなく失踪者と法律に関する問題だというのが物珍しく、前半は楽しめました。
ところがソーンダイク博士が本格的に乗り出してからは、ある意味オーソドックスな探偵小説になってしまうので、よく言えば堂々たる本格、悪く言えば古くさい古典作品、でした。
チャンドラーがフリーマン作品を好きで褒めていたというのが面白い。
エジプト学者ベリンガムが不可解な状況で忽然と姿を消してから二年が経った。生死不明の失踪者をめぐって相続問題が持ち上がった折も折、各地でバラバラになった人間の骨が発見される。はたして殺害されたベリンガムの死体なのか? 複雑怪奇なミステリに、法医学者探偵ジョン・ソーンダイク博士は証拠を集め、緻密な論証を積み重ねて事件の真相に迫っていく。英国探偵小説の古典名作、初の完訳。(カバーあらすじ)
[amazon で見る]