一時期復刊ドットコムからの刊行が続いていた、『ビビを見た!』の大海赫の新作絵本です。
デ・ラ・メア「なぞ」のように、ひげの紳士や猫や蛇が次々とカバンのなかに消えてゆきます。
そんなストーリーもさることながら、「ぼくのアッコ」というのが、語り手の少年が一方的に気に入って名前をつけて置き引きしようとした鞄の名前だというところがすでに異様です。
鞄とともに重くなってゆく「ぼくの心」とは、おそらくは罪の意識なのでしょう。
であれば、鞄から出てきた本とナイフと鍵というのも、何かの象徴なのでしょうか。ナイフと鍵というのは物騒ですが、本というのは知識でしょうか。あるいは、蛇はイヴの誘惑者で鍵は宝石箱と考えると女性の象徴……と、フロイトなど普段は馬鹿にしているのに、つい考えてしまいます。