『悪党どものお楽しみ』パーシヴァル・ワイルド/巴妙子訳(ちくま文庫)★★★☆☆

 『Rogues in Clover』Percival Wilde,1929年。

 足を洗ったギャンブラーのビル・パームリーが、ポンコツな友人トニー・クラグホーンの求めに結果的に応じて、さまざまな詐欺を暴くことになる短篇集。原書未収録の「堕天使の冒険」新訳版を追加収録(旧訳は創元推理文庫の『世界推理短編傑作集3』に収録されています)。

 トニーや読者にはイカサマが明らかにされない状態でビルがゲームを仕掛けて、すべて終わったあとにトニーたちに答えが披露されるという構成になっているので、明らかにされるのがただのイカサマの手口に過ぎないとはいえ、一応は探偵小説ものの体裁は整っています。

 カードのみならずルーレットやチェスや屋外カードゲームも扱われているとはいえ、毎回毎回イカサマなのはわかりきっているので、謎の引きと解答としては弱いのは否めません。

 そういう意味でプロローグ的な位置づけの「シンボル」だけはイカサマトリックではなく心理的な仕掛けがテクストに仕掛けられていて、ほかの収録作とは違った読後感をもたらします。

 また手先のごまかしではなく小道具を用いた「アカニレの皮」も、毛色の違う仕掛けが楽しめました。

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 悪党どものお楽しみ 


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