『緑ヶ丘小学校大運動会』森谷明子(双葉文庫)★★★☆☆

 運動会のプログラム仕立ての目次からもわかるとおり、運動会当日の一日の出来事が描かれています。いいですね、こういうの。

 来賓室の優勝杯のなかに降圧剤の入ったピルケースがあるのを見つけたところまでは、まだ日常の不思議の範疇でした。小学生たちが「殺人」と考えたところで、子どもゆえの浅慮――というよりは、少年探偵団のように謎解きごっこに夢中なあまりと感じられるからでしょう。マサルの母親、太田先輩の祖母、同級生の母親の急死等、死が身近に描かれていたとしても、です。運動会という非日常のわくわく感も、深刻になりすぎない役に立っていたと思います。片思いにやきもきしたり、小学生男子らしいバカなことをやったり。PTAのいや~な感じもしっかり出ていました。

 マサルの父親にしてからが、親としての関わり方に悩み、父母との関わり方に悩み……と、何かに不審を感じていてもそれに集中できない状況がありました。

 舞台は運動会という一日の出来事に設定されているとはいえ、その日のうちに解決されなければならないという必然性があるわけではありません(結果的には証拠という観点からぎりぎりセーフだったわけですが)。だから緊迫感は犯罪というよりも上記のような身近な事柄から生まれていました。

 そうはいっても終盤はやはり盛り上がります。マサルサイドと父親サイドが情報を共有せずバラバラに動いているというのも、父親は生徒の顔や名前も親の名前も知らないというのも、もどかしさを誘いました。

 今日はマサルにとって小学校最後の運動会。張り切るマサルだが、優勝杯の中に薬の空シートを見つけたことから状況は一変する。頭のいいヒロシが言うには「殺人の証拠」かもしれないのだ。一方、マサルの父親・真樹夫は、学校でドラッグが出回っていると耳にする。携帯には差出人不明の曰くありげなメール、そして昨夜は、ある児童の母親が死んだ。学校で今、何が起きているのか? 特殊な空間に集った大勢の人々が、プログラムに沿って行動する一日。小学校の校庭が、ミステリの格好の舞台に変貌する!(カバーあらすじ)

  


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