『春や春』森谷明子(光文社文庫)★★★☆☆

 俳句甲子園に出場する高校生を、章ごとに視点人物を変えて描いた作品で、文学少女や書道経験者に楽器演奏者といった個性的なメンバーがそれぞれの持ち味を活かしてチャレンジするのですが、せっかくの個性がさほど生かされていないように感じました。でもあんまりわざとらしすぎるよりはこのくらいが丁度いいのかもしれません。

 俳句甲子園には実作だけではなく「鑑賞」という評価ポイントがあり、互いの作品の良い点悪い点を議論し合う様子がそのまま俳句解説にもなっていて、俳句に馴染みのない読者にもわかりやすいものになっていました。

 点数化しにくい俳句というものに鑑賞というロジカルな要素をつけ加え、そのおかげでバトルとしても成立できている俳句甲子園という形式を考えた現実の人たちには頭が下がります。

 「百日紅紙なら捨て易きものを」

 俳句の定型よりも自分らしい表現を愛し、ほのかな恋を抱く、弱気な文学少女・瑞穂に一番の共感を覚えました。

 俳句の価値を主張して国語教師と対立した茜。友人の東子に顛末を話すうち、その悔しさを晴らすため、俳句甲子園出場を目指すことに。ふたりのもとには、鋭い音感の持ち主の理香や、論理的な弁舌に長けた夏樹らの個性的な生徒が集う。そして、大会の日はやって来た! 少女たちのひたむきな情熱と、十七音で多彩な表現を創り出す俳句の魅力に満ちた青春エンタテインメント!(カバーあらすじ)

  


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