『みんなの怪盗ルパン』小林泰三他(ポプラ文庫)★★★☆☆

『みんなの怪盗ルパン』小林泰三他(ポプラ文庫)

 2016年初刊。出版社&イラストつながりでしょうか、みんなの少年探偵団シリーズに続いてルパン・トリビュートも刊行されています。が、やはり当たり外れが大きかったです。
 

「最初の角逐」小林泰三(2016)★★★★☆
 ――ロナルド・アデイア殺害事件の現場付近を見学していたときのことだった。わたしが家に戻ると、ついさっきぶつかった老人が会いに来た。「何者だ?」「古本屋の……」「古本屋に尾行されて気付かないわけがない」「尾行を感知する方法はわたしに教わったのかい、ワトソン君」「動くな、手を上げろ。おまえはホームズではありえない。モリアーティーの残党なら辻褄が合う」

 角逐とは「力比べ。競い合うこと」。その意味は読めばわかります。のっけからホームズもの「空家の冒険」をなぞるようにスタートするサービスっぷり。ところが原典では老人に正体を明かされてびっくりするはずのワトソン君が、あろうことかホームズに拳銃を向け、モリアーティーの残党呼ばわりするというおかしな方向に転がってゆくのです。果たしてルパンはどこで登場するのかも気になりながら楽しめました。
 

「青い猫目石近藤史恵(2016)★★★☆☆
 ――再会したシモーヌは相変わらず美しかったが、母親の再婚相手の姉である裕福なヴィルヌーヴ夫人に引き取られ、売れない画家である僕にはますます手の届かない存在になっていた。僕は夫人に招かれて庭の絵を描く仕事をしていた。三ヶ月後、夫人の許にルパンの予告状が届いた。僕は猫目石を預かりルパンから守ることになった。

 ルパンにはさまざまな顔があるんですよね。泥棒だったり探偵だったり伊達男だったり。本作で描かれているのは、人助けをするルパンです。なぜ人助けをするかというと、おそらくは女性の魅力に打たれたからだというのが、いかにもルパンらしいところです。
 

「ありし日の少年ルパン」藤野恵美(2016)★★☆☆☆
 ――ラウール少年はできるだけ仕立てのよい服を着て、首飾りの宝石を売り、でたらめの差出人の名でアンリエットに送金していた。それがよりによって首飾りを掏られてしまった、このぼくが。ラウールはスリを追いかけ、その少女が親方から暴力を振るわれていることを突き止めた。ラウールは少女を救うため、少女に勝負を持ちかけた。

 「王妃の首飾り」のあとのラウール少年と少女掏摸の競い合いを描いただけの他愛ない内容のように見えましたが、実は「ルパンの脱獄」で触れられていた「奇術師ディクソンとその助手ロスタ」を描いた、ルパンの前日譚、語られざる事件でもありました。
 

「ルパンの正義」真山仁(2016)★☆☆☆☆
 ――酔った軍人たちが老人に暴力を振るっているのを救ったルパンは、仲裁に入ったドレフュス大尉の人柄に惹かれ、親交を結ぶようになった。ところがドレフュス大尉がスパイ容疑で逮捕された。大尉がユダヤ人だったから罪を着せられたようだ。

 有名人を登場させる趣向がやりたかっただけで、原典に対するリスペクトも感じられず、ただルパン(という名前のキャラクター)がドレフュス事件の冤罪を晴らそうとだらだらと地味な活動をしていくだけの話でした。
 

仏蘭西紳士」湊かなえ(2016)★★☆☆☆
 ――橘美千代はホームズ物語やルパン物語が好きで英語とフランス語を学んでいた。母親が肺病で死んでからは七歳上の姉・小百合が母親代わりだった。だが父親が殺され、容疑者として恋人が逮捕され、下品な父親の従弟から求婚されて小百合は參ってしまった。美千代がフランス人のレニーヌ公爵と知り合ったのはそんなときだった。

 明らかにルパンなのに作者がルパンだとは明言していない作品というのも原作にはあって、それを踏襲しているところがおしゃれです。ルパンが日本に来たという趣向が目を引くものの、肝心の小説の中身はルパンというより日本の探偵小説みたいでした。日本が舞台だからそれでいいのかもしれませんが。

  


防犯カメラ