『キャッツ・アイ』R・オースティン・フリーマン/渕上痩平訳(ちくま文庫)★★☆☆☆

キャッツ・アイ』R・オースティン・フリーマン/渕上痩平訳(ちくま文庫

 『The Cat's Eye』R. Austin Freeman,1923年。

 語り手アンスティが偶然遭遇した銃殺事件。盗まれていたのは価値のない宝石だけ。犯人は指紋を残しており逮捕は容易かと思われたが……。

 一応のところ捜査はしていて新しい事実もちょこちょこ出て来るのですが、どれも物語の推進力にはなっておらず、かなり退屈です。目撃者の女性やソーンダイク博士が襲われるところはさすがに盛り上がりますが、これはスリラーとしての面白さでしょう。

 解決篇に至って、これまでに明らかになっていたいくつもの謎や伏線や事実が一挙に解明されるのですが、ソーンダイクが一人語りでただ羅列しているだけなので平板このうえなく、せっかくの謎解きのカタルシスがまったく感じられません。

 結局序盤から中盤を退屈と感じたのも同じ理由で、時系列に沿ってただただ順番に事実が明らかになるだけなので平板で、これは新聞連載の弊害でしょう。

 暗号だったり、価値のないものが盗まれた理由だったり、現場にいた二人の容疑者とは別の第三者の指紋だったり、古文書の誤読トリック(?)だったり、ミステリ小説に足るネタは豊富だし、すべてが解決篇で一挙に明らかになるだけに、この平板さはもったいない。この退屈さがソーンダイクものの特長と言ってしまえばそれまでですが。『ポッターマック氏』だけが特殊なんですね。

 足跡の石膏型や毒物の検出や指紋の検出など、ソーンダイクものらしい、なくてもいいような科学場面もあって、そういうところも今となっては味わいです。

 助けを求める若い女性の叫び声に、帰宅途中の弁護士アンスティが駆けつけると、そこには男女が激しく組み合う姿が。男は逃走、脇腹を刺された女性を運び込んだ近くの邸では、主人が宝石コレクションの陳列室で殺害されていた。事件は単純な強盗殺人に思われたが、被害者の弟ローレンス卿は警察の捜査に納得せず、ソーンダイク博士の出馬を要請する。本格推理に冒険的要素を加えた黄金時代ミステリ。(カバーあらすじ)

  


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