『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー/鈴木恵訳(早川書房 ポケミス1939)★★★★☆

『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー/鈴木恵訳(早川書房 ポケミス1939)

 『She Rides Shotgun』Jordan Harper,2017年。

 日本語タイトルには『拳銃使いの娘』とあるものの父親が拳銃使いというわけではなく、「殺し屋のような目をしている」とか「サムライの目をしている」のような語法のようです。

 刑務所内でギャングのボスの弟を殺してしまった男が、出所後に娘と自分を守り元妻の復讐をするために、逃亡と戦いの旅を続ける――というのがストーリーで、最近のポケミスにしては薄めの261ページということからもわかるとおり、物語はサクサク進みます。

 というのも何しろ「拳銃使いの娘」ですから、アウトサイダー旅行への対応力が早い。護身術と暴力に昂揚を覚え、父親の制止を振り切ってギャングたちに飛び込んでゆきます。

 著者は『ペーパー・ムーン』や『レオン』の名を挙げていますが、本書の場合はもともとが本当の親子ということもあり、また目的も一緒ということもあって、徐々にではなく比較的あっさりと心を通わせ合っているので、親子や師弟というより『テルマ&ルイーズ』などのような対等なバディのようでした。

 そんな大人と対等な少女がさらに成長してゆくから心に染みます。はじめこそ泣きながら警察に助けを求めていた少女も、ギャングのボスを手玉に取り、一人で強く生きてゆく覚悟をするまでになります。ただ一つ少女趣味だった熊の縫いぐるみが、最終決戦とその後のエピソードで効果的に使われているのが、いっそう強さを引き立てていました。

 ギャング組織に命を狙われるというおよそ勝ち目のない戦でしたが、対立するギャングの存在や、アメリカの白人とメキシカンの対立を利用することで、複雑になることもモヤモヤの残ることもなくきれいに解決されているのは、テレビドラマの脚本家ならではのノウハウでしょうか。

 11歳のポリーの前に刑務所帰りの父親ネイトが突然現われた。獄中でギャング組織を敵に回したネイトは、自分に妻子ともども処刑命令が出たのを知り、家族を救うため駆けつけたのだ。だが時すでに遅くポリーの母親は殺されてしまっていた。やむをえずネイトは娘を連れて逃亡の旅に出る。犯罪と暴力に満ちた危険な旅だ。だがその中で、少女は徐々に生き延びる術を身に着けていく……人気TVシリーズのクリエイターが鮮烈なデビューを飾りアメリカ探偵作家クラブ賞を射止めた傑作犯罪アクション!(裏表紙あらすじ)

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