『ホームズ、ニッポンへ行く ホームズ万国博覧会インド篇』ヴァスデーヴ・ムルティ(アキラ・ヤマシタ)/寺井杏里訳(国書刊行会)★★☆☆☆

『ホームズ、ニッポンへ行く ホームズ万国博覧会インド篇』ヴァスデーヴ・ムルティ(アキラ・ヤマシタ)/寺井杏里訳(国書刊行会

 『Sherlock Holmes in Japan』Vasudev Murthy,2013年。

 この〈ホームズ万国博覧会〉シリーズには、ほかに中国篇とロシア篇がありますが、その二つが古い時代の作品集なのに対し、このインド篇は現代作品ということで期待していたのですが、あまりパッとしませんでした。

 著者はペンネームを日本人名にするほどの日本好きとのこと。

 大空白時代、実は生きていたホームズが日本政府の密命を帯びて、アヘン利権の中国に進出し日本を牛耳ろうとするヤクザから命を狙われながらも、無事スパイを見つけ出すという内容。異国の地でヤクザを手助けするのが、やはり生きていたモリアーティでした。序文の筆者がホームズものに於ける「冒険」を強調しているように、推理要素は少なめです。

 途中で内容と関係のない金閣寺が舞台の事件を解決したり、ヴァイオリンを意識したのかやたらと作中に琴が出てきたりするほか、文体もあまりドイルを意識している様子はありませんし、かなり自由に書かれています。牽引力のある謎もありませんし、現代作品に期待するような新しさはありませんでした。

 実はホームズ(とモリアーティ)が生きていたという作品の場合、実は滝壺に落ちていなかったことにするのが普通だと思うのですが、本書では何と実際に滝壺に落ちていました。しかもホームズだけ。ここがいちばん面白かったです。

 1893年。死んだはずのホームズから、不思議な手紙を受け取ったワトスンは、船で日本に向かう。航海途中で起きる事件、暗躍する諜報員と「ヤクザ」、迫りくるモリアーティ教授の魔の手! 舞台はヨーロッパからインド、そして明治天皇が統べる日本へ…ホームズとワトスンは世界を救えるか!?(帯あらすじ)

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