『今昔百鬼拾遺 鬼』京極夏彦(講談社タイガ)★★★☆☆

『今昔百鬼拾遺 鬼』京極夏彦講談社タイガ)★★★☆☆

 2018年のweb連載を書籍化したもの。2019年初刊。

 長篇では『邪魅の雫』以来の百鬼夜行シリーズ新作になります。とはいうものの京極堂は登場せず、主人公は京極堂の妹・敦子と『絡新婦の理』の呉美由紀が務めます。

 この〈今昔百鬼拾遺〉シリーズは「鬼」「河童」「天狗」と、あまりにもその概念が拡散しすぎていて、京極堂では憑物を落とせなさそうな妖怪が題材となっているようです。

 実際、本書の「鬼」が指す対象は意外なものでした。

 友人のハル子が連続辻斬り事件で殺されたと、美由紀が敦子を訪れるところから物語は始まります。犯人はハル子の恋人・宇野で、凶器の刀を所持していて現行犯逮捕されており、現場にはハル子の母親・勢子もいたという。ハル子には鬼の呪いがかかっていて、自分は斬り殺されると話していたといいます。その話を聞いた敦子は釈然としません。凶器が刀なら痴情のもつれではなく計画的犯行なのではないか。恋人に連続殺人鬼だとばれて殺したのか。母親が現場にいるのに現行犯逮捕とはどういうことか。母親は止めなかったのか。そもそも鬼の呪いとは何なのか――。

 違和感の正体を追って敦子は関係者に話を聞き込んでゆき、そこで刀を巡る因縁――偶然から因縁が生まれたいきさつを発見します。それは超常現象を信じない人間であっても、さすがにそれを偶然で片付けるのは躊躇われるようなとんでもない偶然でした。呪いとは思わないまでも気にはかかるでしょう。ましてや暗示にかかりやすい人間ならば。

 最後に敦子によって、関係者一同の前で違和感の正体が明かされます。明かされてみれば古典的なまでに単純なことで、思い込みや隠しごとによっていかに事実が覆い隠されてしまうかということがわかります。

 各章は「迚も恐い」から始まり、これも鬼を暗示しているようです。

 なぜ講談社タイガから?と思いましたが、講談社タイガってライトノベルレーベルではなく、講談社ノベルスの兄弟レーベルなんですね。そのわりには島田荘司『屋上』は講談社文庫だったりと、基準がよくわかりませんが。

 「先祖代代、片倉家の女は殺される定めだとか。しかも、斬り殺されるんだと云う話でした」昭和29年3月、駒澤野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪異と見える事件に不審を覚え解明に乗り出す。百鬼夜行シリーズ最新作。(カバーあらすじ)

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