『影の子』デイヴィッド・ヤング/北野寿美枝訳(早川書房ポケミス1931)★☆☆☆☆

『影の子』デイヴィッド・ヤング/北野寿美枝訳(早川書房ポケミス1931)

 『Stasi Child』David Young,2015年。

 英国推理作家協会賞の歴史ミステリ賞を受賞、冷戦下の東ドイツを舞台にした作品ということで、重厚な歴史ものを期待していたのですが、驚くほど薄っぺらい内容でした。

 顔を潰された少女の惨殺死体というのはもはやテンプレートと言ってもいいでしょう。東から西への脱走者ではなく逆なのではないか?という謎は面白くなりそうな気配もあったのですが、活かされませんでした。

 捜査班班長と副官の不倫、青年矯正施設に送られた班長の夫と少女……二つのパートが交互に描かれるのですが、どちらの登場人物もまったく魅力がないにもかかわらず背景ばっかり描き込まれるので、事件解決への興味もしぼんでしまいます。

 動機や真相も、ありがちだったりよくわからなかったりと、題材を活かし切れてないと言わざるを得ません。

 1975年2月、東ベルリン。東西を隔てる〈壁〉に接した墓地で少女の死体が発見された。現場に呼び出された刑事警察の女性班長ミュラー中尉は衝撃を受ける。少女の顔面は破壊され、歯もすべて失われていたのだ。これでは身元の調べようもない。現場にいち早く国家保安省のイェーガー中佐が来ており、やがて異例のことながら、事件の捜査がミュラーたちに命じられた。その背景には何かが? 暗中模索の捜査は知らぬうちに国家の闇に迫っていく。社会主義国家での難事件を描き、CWA賞に輝いた歴史ミステリの傑作。(裏表紙あらすじ)

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