『一週間のしごと』永嶋恵美(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『一週間のしごと』永嶋恵美(創元推理文庫

 『НЕДЕЛЬКА』永嶋恵美,2005年。

 扉の題名がロシア語なのは、恐らくロシア民謡「一週間」(テュリャテュリャテュリャテュリャリャ♪)にちなみます。

 あらすじから想像するような青春サスペンスではありませんでした。

 どうして主人公たちを高校生にしてしまったのでしょうか。非常識な行動をしても小学生や少年探偵団ならまだ納得もできたのに。主人公の姉をおかしなキャラにして、エキセントリックでバカだからこういうこともありですよ~というのでは、あまりにご都合主義で安易でしょう。

 主人公の姉・菜加がたまたま見かけた幼い子どもを親切のつもりで誰にも無断で自宅に連れ帰ってくるという馬鹿な行為さえしなければ事件に巻き込まれることはありませんでした。せめて導入くらいは不自然なのをやめてほしかったです。愛すべきキャラクターならともかく、ほんとうにバカでウザくてイライラします。

 探偵役である隣の同級生・恭平も、何の根拠もなく「集団自殺がもし自殺でなく殺人だったら……」とか言い出しますし、すべてがいい加減で適当でミステリどうこう以前に小説としての態をなしていません。西日本と東日本の違いなのかもしれませんが、「土肥=トイ」「水上=ミナカミ」で「ドヒ」「ミズカミ」が少数派であるというわけのわからない常識を振りかざされても困ります。地名ならともかく苗字としては珍しくもないでしょうに。もしも菜加の馬鹿さ加減を表すエピソードのつもりだったとしても恭平の視野の狭さの証明にしかなってませんし、ミーナとミコのミスディレクションのつもりだとしたら不自然すぎてお粗末です。

 しかも警察に行かない理由が、きらいだから……。相手が集団殺人犯だと想像したうえで子どものわがままにつきあうつもりなら初めっから助けるなよ。

 そんなゆるゆるな筋とマンガチックなキャラクターにもかかわらず、ユーモアというわけでもなくガチガチの凶悪犯罪が描かれているのがまた、ミスマッチを通り越して脱力ものです。ストーリーの辻褄を合わせようとか作品の完成度を高めようという発想自体がないのでしょうね。

 プロが書いたとは思えないような、雑でひどい出来でした。

 優等生だがほかに取り立てて特徴のない高校生の恭平。彼はある日曜日、直情的でお節介な幼なじみの菜加に呼びつけられ、一方的に相談される。何でも拾ってしまう癖のある菜加が、昨日渋谷の雑踏で母親から置き去りにされた幼児を連れてきてしまったのだ。なぜか自分の名前すら言おうとしない幼児を、恭平たちは僅かな手掛かりを元に、然るべき場所に送り届けようとするが……。(カバーあらすじ)

  


防犯カメラ