『ティーパーティーの謎』E・L・カニグズバーグ/金原瑞人・小島希里訳(岩波少年文庫)★★☆☆☆

ティーパーティーの謎』E・L・カニグズバーグ金原瑞人・小島希里訳(岩波少年文庫

 『The View from Saturday』E. L. Konigsburg,1996年。

 初版が2000年なのに早くも2005年に金原瑞人による改版が出ているのが不思議だったのですが、どうやら悪訳騒動があったようです。

 博学大会の出場チーム「ザ・ソウルズ」の4人がそれぞれクイズに答えてゆき、そのクイズにちなんだ過去を回想するという構成が取られていて、正直なところ読みづらいです。

 一人目はユダヤ人ノア・ガーショム。両親が旅行のあいだフロリダの祖父母に預けられ、そこで地元のおじいさんイジー・ダイアモンドスタインとおばあさんマーガレット・ドレイパーの結婚式の手伝いをすることになります。ノアは理屈っぽくて、独特の思考と言葉遣いをするのが魅力です。

 二人目はナディア・ダイアモンドスタイン。イジーの孫娘であり、ノアに散々な言われようをしていたアダム・ダイアモンドスタインの娘です。両親は離婚し、今の期間は父親アダムと過ごしています。イジーとマーガレットの出会いのきっかけである海亀産卵の保護を手伝い、父親との関係を疎み、マーガレットの孫息子イーサン・ポッターを意識し始めている、勝気な女の子です。

 三人目はそのイーサン・ポッター。母親がノアの父親の歯医者で働いています。固有のエピソードは少なく、ジュリアン・シンとの交流、そして邦題の元となったティーパーティーと「ザ・ソウルズ」結成の由来が多くを占めています。(原題も土曜日開催のティーパーティーに由来します)。言うべきことも言わないせいでナディアに臍を曲げられてしまうように、あまり自分のことは語らないのがイーサンなりの個性なのでしょう。

 四人目はジュリアン・シン。イギリスで教育を受けたインド系アメリカ人です。ナディアの飼い犬ジンジャーが高校の芝居に出演することになりますが、控えの犬優はいじめっ子の飼い犬でした。自身もいじめっ子に差別を受け、差別された下半身不随の担任を思いやり、犬たちに向ける視線も優しい少年です。

 四人を選抜したのが担任のイーバ・マリー・オリンスキー。新人教師時代の校長がマーガレット・ドレイパーでした。子どもたち四人がそれぞれ魅力的なのに対し、このオリンスキー先生がよくわからない人です。最後にジュリアンの父親から自分でもわかっていなかったメンバー選びの理由を指摘されますが、それは「四人を」選んだ理由であって、「博学大会に」選んだ理由にはなっていません。生徒に対する態度も日本人から見るとちょっとヤバイ人に見えますし、野次がそこまで凶悪なものだというのがわかりません。みんなが見つけたものが「やさしさ」だという結論のわりには乱暴な態度でした。

 6年生のノア、ナディア、イーサン、ジュリアンは仲のよい4人組。車椅子の担任の先生の応援を受けて、知識を競う大会に出場し、ついに決勝へ――。複雑な家庭の事情を織りまぜながら、4人それぞれが親友になった秘密を語る。(カバーあらすじ)

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