『Rhyme for Crime』2016年。
英題が韻を踏んでいてお洒落です。
15歳のころ一度だけ参加した『現代詩人卵の会』。10年後に再会したときには9人からなる詩人の会のメンバーのうち4人が自殺していました。当時「探偵」という詩を書いたことから「探偵くん」と呼ばれた語り手は、その呼び名にふさわしく4人の死の背景を探ろうとします。
詩人に対する世間のイメージ通り、動機はどれも観念的なものです。けれど悲しいかな、『虚無への供物』『哲学者の密室』『時計館の殺人』『生ける屍の死』……幾多の名作には遙かに及ばない、浅いものでした。【※ネタバレ*1】それが短篇程度の短さゆえなのか、作者の実力不足ゆえなのかはわかりませんが。
東京創元社から出版されている以上はミステリ作品で、親子の絆に焦点が当てられ自殺の動機は明らかにされなかった第二章が、第四章で回収されるという仕掛けには、手練れの腕を感じさせます。【※ネタバレ*2】
そして東京創元社ですっかりお馴染みとなった、連作最後のどんでん返しも健在でした。この仕掛けは第四章とも密接に関わっていますし、語り手が自殺の背景にこだわるのにも説得力がありました。【※ネタバレ*3】
とある地方都市でSNSコミュニティ、『現代詩人卵の会』のオフ会が開かれた。九人の参加者は別れ際に、今後も創作を続け、十年後に再会する約束を交わした。しかし当日集まったのは五人で、残りが自殺などの不審死を遂げていた。生きることと詩作の両立に悩む僕は、彼らの死にまつわる謎を探り始める。創作に取り憑かれた人々の生きた軌跡を辿り、孤独な探偵が見た光景とは?(カバーあらすじ)
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*1 痛みを詩にしたくてわざわざ苦しむ毒を服んだ。性同一障害の女が男になりたくて「女はいつも生き残る。男の詩人は早く死ぬ」という言葉通りに死んで男になろうとした。
*2 四人目は自殺ではなく殺人であり、盗作された二人目がはずみで殺し、それを悔いて自殺した。
*3 語り手は10年前の「探偵くん」とは別人だった。10年前の「探偵くん」は詩「探偵」を盗作し、友人である作者に指摘され自殺。本当の「探偵」である友人が10年後の会に参加した。