「〈古典部〉シリーズ15年のあゆみ」
例えば「九マイルは遠すぎる」や「十三号独房の問題」ならすぐにわかるのですが、「やるべきことなら手短に」が「チェスタトンのような逆説のつもりで書いたかな」と言われると、読み返して確かめたくなります。
「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」(2017)★★★☆☆
――奉太郎の中学時代の読書感想文を大日向が引っぱり出してきた。「山月記」の感想文は、虎が人語をしゃべるわけがないのだから草むらから李徴が話していたのだ、という敢えて誤読したようなものだった。だが同じような「猿蟹合戦」の感想文には、里志は違和感を覚えた。
書き下ろし短篇。二年生の五月、「わたしたちの伝説の一冊」で「走れメロス」の感想文を読まれたのが「先週」の出来事です。これまでの六冊を通して、奉太郎が単なる面倒くさがりではないということが読者にもわかっているからこそ、この結末が活きています。タイトルの「殺人」は「猿蟹合戦」の猿殺しと、奉太郎の身に降りかかった災難を表しています。
北村薫らしく白菜栽培のなぞにミステリを感じ、米澤穂信もジェラルド・カーシュ「飲酒の弊害」を読み終えてから「奇妙な味」か「日常の謎」だと気づくという話をしています。
「対談 こんなミステリが読みたい!」米澤穂信×恩田陸(2008)
『夏期限定』は、倒叙からダイイング・メッセージ風に転換してそこからひねるという仕掛けがあったそうです。「遠まわりする雛」は、「チェスタトンに「大法律家の鏡」という短編があるんです。遠く辿っていくと、そのあたりに行き着く」そうですが、どこがどう影響しているのか二作とも読み返してみないと。
「〈古典部〉の世界」
主要登場人物データと、「著者による〈古典部〉シリーズ全解説」。『遠まわりする雛』には、「冒頭の『学校の中だけの謎』から最後の『学校の外だけの謎』へと移行させていくという、小さな遊び」があったそうです。
「さらにディープな〈古典部〉隠れネタ大公開!」(2008,2017)
ごく普通の語句説明もあれば、寺とかミューとかやコスプレなどのわかる人にはわかるネタを解説してくれたり、春閻魔とハール・エンマみたいな遊びを解説してくれたりしています。
「米澤穂信に30の質問 読者編」
読者編なだけあって、ほとんどは質問者にとっての興味本位の質問でした。奉太郎の名前の由来や、奉太郎がホームズとワトソン形式ではない理由など、質問者以外にも興味深い質問もちらほら。
「あなたの本棚見せてください! 古典部メンバー4人の本棚」
著者コメントとともに、30冊が選ばれています。里志が様々なジャンル、伊原が漫画なのはわかりやすい。
「お仕事場拝見2017」
正座して執筆しているというのに驚きました。
「『いまさら翼といわれても』刊行密着レポート!」
サイン本作成とサイン会の様子。
「米澤穂信の作られ方 米澤穂信のマイルストーン」(2013)
血肉となった書物の紹介と、その時々の影響など。『冬期限定』は「『時の娘』と同じモチーフを使うつもり」だそうです。『追想五断章』の作中作は久生十蘭の影響とのこと。
「米澤穂信の作られ方 講演録 物語のみなもと」(2016)
作家は何をもって自らの仕事を正当とするのか、について。なぜ読むのか、なぜ書くのか。
「豊潤なミステリを生み出すために」米澤穂信×綾辻行人(2013)
古典部シリーズの恋愛要素を指摘する大崎氏と、自覚のなかった米澤氏。
「米澤穂信に30の質問 作家、声優、漫画家編」道尾秀介・辻村深月・他
楽屋ネタで遊んでいる人は何なんだ。谷川流が意外と真摯な質問をしていて、ボリュームも一番あります。
「門外不出の〈古典部〉ディクショナリー」
部活・食べもの・などの項目事典。
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