戦後直後、語り手である18歳の阿佐田哲也青年は、仕事もないまま日々を暮らしていましたが、戦時中に工場で知り合った工員・上州虎に誘われて、博打の世界に足を踏み入れます。
第一章、サイコロ賭博のチンチロリンをめぐる手に汗握る駆け引きや、博打打ちドサ健による高い授業料には、たちまち引き込まれてしまいました。
給料代わりに博打で金を得ようと決意した哲は、賭博クラブに出かけて外国人と麻雀をすることになります。ここからタイトルにもあるように描かれる賭け事は麻雀ばかりになります。
チンチロリンのときにはルール説明もあり、サイコロの絵文字も効果的でしたが、麻雀となると一切のルール説明もないので、麻雀を知らない人間にとっては麻雀牌の絵文字も無意味な記号の羅列でしかなく、どれだけ物語が面白くとも博打シーンになるたびにしらけてしまう結果となりました。
チンチロリンのときにドサ健から痛い目に遭わされたにもかかわらず、ふたたびドサ健に痛い目に遭わされ、賭博クラブのママ八代ゆきと意気投合してからも二人一緒に痛い目に遭わされたりと、他人を信用する方が間違っているような世界がどこまでも続いていて、まさにアウトローという非情な世界でした。
人を騙そうが何しようが勝ちさえすればいいんだ、という勝負師のドサ健が哲たちの策に嵌まってツキにも見放され、譬喩でも何でもなく実際に女房(正確には同居人)を質草にするのには笑ってしまいました。
他人に痛い目を見させて来たドサ健が、遂に痛い目に遭ったと思った矢先、やはり根っからの鬼畜であることがわかって大笑いでした。