『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960)★★★★☆

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960)

 『Rester groupés』Sophie Hénaff,2016年。

 パリ警視庁迷宮捜査班シリーズ第二作です。ユーモアミステリみたいな副題はどうにかならなかったのでしょうか。シリーズは第三作まで発表されているようです。

 お馴染みの面々の顔見せのあとは、落ち目のコメディアンの悲哀が語られます――と思っていたら、そのコメディアンがカペスタンの元夫だとわかって驚愕しました。拷問されて殺され、標識に墓碑銘を残された猟奇殺人の被害者は元警察官で、元夫の父親だったのです。

 二作目ですごい飛び道具を持ってきたなあという感想で、三作目がどんな話なのかが今から楽しみです。

 捜査介入部(BRI)と刑事部と特別班がそれぞれ捜査することになった元警視正殺害事件は、同様の手口による連続殺人の一つであることが判明します。こうした情報をいち早く入手したのが特別班のメンバーだというのが、縦割りの警察組織よりも奇人変人のネットワークの強みなのでしょう。

 ほかのメンバーそれぞれにもやはり前作同様に見せ場はあり、コンピュータに強いダクスは非合法な情報収集には欠かせませんし、死神トレズの威光(?)は相変わらず同業者にはよく効いていました。そんななかスピード狂のレヴィッツだけは前作に続いて見せ場なしで笑ってしまいました。新メンバーが乗るポニーに負けるレヴィッツ……。同じく新メンバーのネズミにさえ見せ場はあるのに……。

 真相は苦いものでした。警察が二度までもヘマをしなければ最悪の事態は避けられていただけに、いっそう苦さが際立ちます。どこまでも真っ直ぐな感情を持つがゆえに起こってしまった出来事だというのも悲しさを引き立てています。

 アンヌ・カペスタン警視正率いる特別班に、新たな殺人事件が舞いこんだ。被害者はパリ司法警察の元警視正で、捜査は捜査介入部、刑事部との三つ巴に。さらにこの被害者、アンヌの元夫の父親だった……! 捜査を進める特別班はプロヴァンス地方の村とリヨンで起きた二つの未解決殺人事件に辿り着く。これらの事件を繋ぐ因縁とは? 他部局よりも先に事件の真相に迫れるのか? 自らを近世の銃士と信じ、パリの街中でポニーを駆る新メンバーも登場。パワーアップ、スピードアップした特別班の名捜査をご堪能あれ!(裏表紙あらすじ)

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