『いただきます。ごちそうさま。 怪談えほん13』あさのあつこ作/加藤休ミ絵/東雅夫編(岩崎書店)、『おめん 怪談絵本14』夢枕獏作/辻川奈美絵/東雅夫編(岩崎書店)
怪談えほん第三期の第二回配本と第三回配本です。第二期の高橋克彦はいつの間にか中止になっていたので9は欠番なんですね。……と思っていたら、2024年2月に「怪談えほんコンテスト大賞受賞作」+伊藤潤二という形で9巻目が発売されたようです。
『いただきます。ごちそうさま。』あさのあつこ/加藤休ミ(岩崎書店)★★☆☆☆
主人公は食いしん坊の子ども。しばらくは好きな食べ物ばかりが羅列され、怖くなる雰囲気はありません。お父さんが八の字ヒゲを生やしていて、いつの時代のお父さんなんだと笑っちゃいました。不穏な空気になってくるのは真ん中近く、「なんでも たべます。たべられます。」で真ん丸にふくらんだ姿が描かれます。出会った犬を食べるのは予想通りにしても、食べられる子どもが口から血反吐か何かを吐き出しているのはグロテスクで、画家の妙なこだわりを感じます。
他人を妬んだり憎んだりしてばかりの子が呪いのおめんを手に入れてしっぺ返しを喰らう話です。いつの時代の日本なんだというような(そもそも日本なのでしょうか?)、妙に生々しくて小汚い下町が描かれていて、おめんの怖さよりもむしろそういった背景に生理的な嫌悪を感じました。呪いが成就して有頂天になっている場面が金魚とともに明るく描かれているのはともかく、絶望に駆られてうずくまっている場面で明るく輝くすだれか何かのなかにいるのは何ともブラックです。「どんどろぼろぞうむ でんでればらぞうむ」という呪文の響きもおどろおどろしい。「わたしのかお おめんと おんなじになっていた」の場面で、主人公の顔を描かないのは卓見だと思いました。そこであの埴輪のような顔を描いてしまったらギャグにしかならないでしょうから。
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