『ミレニアム・ピープル』J・G・バラード/増田まもる訳(創元SF文庫)
『Millennium People』J. G. Ballard,2003年。
20世紀の作家というイメージがあったので、9・11に影響を受けて2003年に書かれた作品だということに驚きました。
そうは言っても何を書いてもバラードと言うべきか、現実の9・11から中産階級によるテロという要素だけを取り出して、終末感と倦怠感の漂う世界に放り込んだような印象です。
テロに巻き込まれて前妻が殺されたエピソードがいつまでも尾を引いていて、通底音のように作品を覆っています。
図らずもテロに巻き込まれるのはともかく、その後ずぶずぶと絡め取られてしまうのがよくわかりません。
一般人は何となく流されて、首謀者らには観念的な動機があるというのは、現実の集団犯罪やテロリズムでもそんなものでしょうか。
首謀者不明のうえ犯行声明もなかったヒースロー空港の爆破テロに巻き込まれ、精神科医デーヴィッドの前妻ローラは無意味な死を遂げた。デーヴィッドはテロの首謀者を突き止めようと試みる中で、医師グールドが主導する、高級住宅街チェルシー・マリーナの住民による目的なき革命計画の存在を知る。20世紀SF最後の巨人バラードによる黙示録的傑作。『千年紀の民』改題文庫化。(カバーあらすじ)
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