「富豪刑事の囮」(1975.8)★☆☆☆☆
――五億円強奪事件の時効まであと三カ月。容疑者は四人まで絞られていたが、決定打がない。そのとき、大富豪の神戸喜久右衛門の息子である神戸大助刑事が提案した。盗んだ五億円を使うように仕向けるのだ。大助が身分を偽って容疑者たちに近づき、彼らの前で金を使えば、対抗して五億円に手をつけるのではないか――。父親の秘書鈴江の協力も得て、計画は順調に進んでいった。
筒井康隆にしてはギャグの切れがありません。また、最後にもう一ひねりがないので、真犯人にお金を使わせるため富豪刑事がじゃぶじゃぶお金を使うというアイデアが出た時点で出オチのような作品でした。
「密室の富豪刑事」(1976.2)★☆☆☆☆
――宮本鋳造株式会社の宮本社長が密室状態のなかで焼死した。出火原因は不明。煙草が火元にしては火のまわりが早すぎる。来訪していた江草鋳物工業の江草社長が九時十五分ごろ帰っている。出火した時間とほとんど同時であるため、江草が放火したのではという疑いが出た。だが社長室に火を放ったあとでどうやって密室から出たのか。
犯人を罠に嵌めるために犯行を再現させるのは珍しくありませんが、社長殺しを再現するために会社を設立してしまうのが富豪刑事ならではです。火事が二件続けばさすがに怪しまれるのは置いておくにしても、【機械で酸素を送り込んで酸素の黄土を上げて火事になりやすくする】この方法ではもともとがアリバイもないし目撃される恐れもあるし密室のメリットがあまりありません。読者への挑戦あり。
「富豪刑事のスティング」(1976.11)★☆☆☆☆
――高森建設社長・陽一から、息子の映一が誘拐されたという連絡があった。『警察へ連絡したら子供の命はない』と言われ五百万円を払ったが、息子は帰ってこず、さらに五百万円の身代金の要求があったため、悩んだ末にたまりかねて警察に連絡したのだという。高森建設の経営状態は苦しく、支払った五百万円も社員の給料全額だった。追加で払う金などない。喜久右衛門の提案で、銀行の融資を装って大助が身代金を肩代わりしようと考えた。それは成功し、身代金の受け渡しにまでこぎ着けたが……。
時系列に関して実験的なことをやっているような雰囲気はありますが、ことさら言い立てるほどのものではありません。断片的に構成することで、誘拐犯のチェイスを誤認させたりする効果はありましたが。「スティング」というタイトルではありますが、映画『スティング』ほどの仕掛けはありません。
「ホテルの富豪刑事」(1977.12)★☆☆☆☆
――関西と関東の暴力団が談合するという情報を得た県警は特別捜査本部を立ち上げ、大助の財力によって地元の旅館をすべて予約し満室にして、暴力団がエンジェル・ホテルに泊まらざるを得ないよう、一網打尽にする計画を立てた。ところが二カ月前にジョーダン夫妻が新婚旅行から帰って来ると、疲れているからエンジェル・ホテルに泊まると言って聞かない。やむなく宿泊を認めたものの、ジョーダン夫人が殺されてしまった。
暴力団と警察しかいない現場で起こった一般人殺害事件というシチュエーションはなかなか魅力的です。ギャグを絡めつつ、古典ミステリ【※「折れた剣」】のネタを換骨奪胎するというのもこれまで通りでした。
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